朝日新聞東京本社・経営企画室主査の中川博行氏をゲストに迎えた今回の『中山泰秀のやすトラダムス』(11月17日放送/Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)。一般社団法人日本新聞協会の一員でもある中川氏が、「新聞と軽減税率」というテーマで、日本と海外の税体系の違いや、軽減税率導入に向けた課題や展望などについて語った。

知識には課税しないのが西欧諸国のスタンダード

中山 今回は、朝日新聞東京本社・経営企画室主査の中川博行さんにお話を伺います。

 今、政府では税制調査会が開かれ、来年度の税制や予算編成などについて討議中です。また、来年4月から消費税率が8%に引き上げられるのに伴い、例えば生活必需品の税率を低く抑える軽減税率など、複数税率の導入も議論されています。

 新聞への課税は「知識課税」とも言われますが、中川さんはこの問題をどうお考えですか。

中川 私は朝日新聞東京本社の経営企画室に所属していますが、一方で日本新聞協会において軽減税率導入に取り組む部会のメンバーとしても活動しています。今回は、同協会の考えや意見をお話ししたいと思います。

 日本新聞協会では、1986年に売上額を課税標準として課される「売上税」の構想が浮上した時から、新聞購読料に対してゼロ税率の適用を主張してきました。しかし、消費税導入時や、3%から5%に税率を引き上げた時も特例措置が講じられることはなく、課税されたまま今に至っています。

 消費税は来年4月に8%、2015年10月に10%への引き上げが予定されていますが、それ以降も増税は続くことが予想されます。

 そうした状況を踏まえ、新聞や雑誌、書籍、また最近ではデジタル新聞なども含まれますが、知識や教養、情報を普及させる役割を持つ媒体には軽減税率が適用されるべきだというのが新聞協会の立場です。

ロンドン・ヒースロー空港の新聞売り場(ウィキペディアより)

中山 海外では新聞に軽減税率が適用されているのでしょうか。

中川 日本新聞協会が今年1月15日に公表した「軽減税率を求める声明」でも取り上げていますが、西欧諸国では「知識には課税せず」という共通認識があります。

 現にOECD(経済協力開発機構)加盟国34カ国のうち、ほとんどが新聞や書籍に軽減税率を適用しています。

 イギリス、ベルギー、デンマーク、ノルウェーにいたっては新聞をゼロ税率にしている。つまり「知識課税はしない」という考えを貫いているのです。

 その他の主要EU加盟国の例を挙げると、フランスの標準税率は19.6%ですが、新聞の税率は2.1%です。イタリアは標準税率21%に対して4%、ドイツは19%に対して7%。それぞれ率は違うものの、2割近い付加価値税率の国でも1桁の軽減税率を実施しています。