年末の防衛大綱策定に向けて詰めの作業が続き、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)での議論も活発化している。一方、我が国南西諸島方面の情勢はますます緊迫の度を強めている。一刻の猶予もままならぬ。今こそ、我が国は、シームレスな防衛態勢を直ちに構築して、遺憾なきを期すべきである。
現大綱等に見る「シームレスな防衛」
1 「22大綱」における防衛力の役割における「シームレス」について
「Ⅴ 防衛力の在り方」の「1 防衛力の役割」(1)実効的な抑止及び対処」において、「我が国周辺における各国の軍事動向を把握し、各種兆候を早期に察知するため、平素から我が国及びその周辺において常時継続的な情報収集・警戒監視・偵察活動(以下「常続監視」という)による情報優越を確保するとともに、各種事態の展開に応じ迅速かつシームレスに対応する。また、本格的な侵略事態への備えについて、不確実な将来情勢の変化への必要最小限の備えを保持する。その際、特に以下を重視する」(太字筆者)と記述している。
重視すべき事項として、(1)周辺海空域の安全確保、(2)島嶼部に対する攻撃への対応、サイバー攻撃への対応、(3)ゲリラや特殊部隊による攻撃への対応、(4)弾道ミサイル攻撃への対応、(5)複合事態への対応、(6)大規模・特殊災害等への対応、が列挙されている。
2 防衛大綱自民党提言(平成25年6月4日)
「5項「総合的・統合的安全保障戦略の作成」の(1)基本方針」において、「さらには、環境は地理的概念が希薄となり、平時と有事の境界が曖昧になり、各種政策を重層的にかつシームレスに機能させる戦略が必要である」と記述している。(太字は筆者)
3 今後の防衛態勢・運用のキーワードは『シームレス』
彼の民主党政権下で策定された「22防衛大綱」で初めて使用された「シームレスな対応」との語彙・文言は、極めて含蓄のある深い内容を包含するものであり、恐らく今後の防衛態勢や防衛力の整備・運用におけるキーワードとなろう。
シームレス(seamless)は、英語で「継ぎ目のない」という意味であり、平時から有事へおよび有事における各種事態に、スムーズに対応できるということである。
本年末に策定される新防衛大綱でも、この「シームレス」はキーワードになることは疑いを容れない。
従来の防衛力の整備や運用或いは態勢整備においては、多分意識はされていたかもしれないが、それをメーンとして考慮してはこなかった。
今までは、ある程度の防衛力を整備することが主たる目標であって、想定した事態に対処し得る防衛態勢をいかにして構築するかが焦点であったから、それもやむを得なかったとも言える。