スーパーマーケットやコンビニエンスストアの棚に“密かな変化”が起きているのをご存じだろうか。
以前はインスタントコーヒーの瓶が並んでいたはずの棚を、いつの間にか様々なスティックコーヒーが占拠するようになったのだ。
スティックコーヒーとは、インスタントコーヒーに砂糖や粉末のミルクを加えて、1杯分ずつ小分けし、スティック状に包装した商品。カップにあけてお湯を注ぐだけでカフェオレやカプチーノが楽しめる。
コンビニエンスストアやファストフードなどがコーヒーに力を入れている中で、各コーヒーメーカーはスティックコーヒーに力を入れている。群雄割拠のコーヒー時代、スティックコーヒーは生き残りのための切り札となるだろうか。
“絶滅危惧種”と化した大容量瓶詰め
コーヒーの魅力は湯気とともに立ち上る香りとさわやかな苦み。その独特の味わいで世界中の人を魅了してきた。
日本では、江戸時代にオランダ商館に持ち込まれたものがコーヒーの始まりとされるが、本格的に飲まれるようになったのは明治時代になってからだ。戦後に消費量が増え、財務省「通関統計」によると、2002年にはコーヒー豆の年間輸入量が40万トンを突破し、その後も40万トン前後で推移している。いまや日本はコーヒー豆輸入量世界第3位のコーヒー消費国なのだ。
コーヒーが日本人の生活に溶けこむ火付け役のひとつとなったのがインスタントコーヒーだ。コーヒー豆を挽いて淹れるレギュラーコーヒーは喫茶店で飲むもので手間もお金もかかるが、インスタントコーヒーなら気軽に飲めると、1960年代にブームが起こり、家庭に普及した。
インスタントコーヒーの中でも、いまスティックコーヒーの人気が高まっている。2012年の売り上げは270億円を超え(図)、インスタントコーヒー全体の売り上げの約4割を占める。最近では各種ブレンドばかりでなく、エスプレッソやカフェオレなど種類も豊富だ。
(味の素ゼネラルフーヅ提供資料をもとに筆者作成)
その一方で、従来の大容量瓶入りのインスタントコーヒーの消費量は減っている。購入する年齢層は50代以上が多いこともあり、インスタントコーヒーの需要が瓶入りからスティックコーヒーへと変化していることがうかがえる。