米国国家安全保障局(NSA)元職員のエドワード・スノーデン氏が6月に米国の諜報機関が実行している監視・盗聴プログラムを明らかにした時のこと。
当初は米国を「警察国家」と書き、スノーデン氏を「勇気ある告発者」と英雄視した欧州メディアは、数日後に突如として彼を「国家機密を白日の下にさらした犯罪者」として論調を一転させた。
これについては以前にも書いた(2013年6月25日付「米国の『スパイ大作戦』が欧州に与えた衝撃」)。
10月に入ってからのこの数週間にスノーデン氏が暴露した内容は、米国は各国に設置された米国大使館をNSAの前哨基地としており、そこで各国家首脳らのメールを読み、通話を盗聴して日常の動向とコミュニケーションを監視しているということだ。
さらにインターネット大手のヤフーとグーグルから全世界のほぼすべての通信を窃盗し格納していることも暴露された。彼がメディアに公表したドキュメントは数千に上る。
さらに米国だけではなく、他の欧州国、特に英国が米国と同一の行為に手を染めていたことが暴露された。米国がドイツのアンゲラ・メルケル首相の携帯電話を盗聴していたことが大きく報じられたが、スノーデン氏の漏洩文書によると、英国の諜報機関も米国とほぼ同様にメルケル首相を盗聴・監視していたということだ。
スノーデン氏がこれをリークしたことにより、欧州間に今大きな激震が走っている。
米国・英国・ドイツ間で高まる緊張
「同盟国」である欧米各国が国民に対する監視システムの協力体制を維持する一方、他国の首脳ら要人のメールを密かに監視し通話を盗聴し、その腹の中を互いに探り合っている。このことも暴露され、特に米国・英国・ドイツ間での緊張が高まっている。
スノーデン氏の文書に基づいて英インディペンデント紙が報じたところによると、ドイツにある米国大使館上層部の構造は通信監視ポスト、つまり「スパイの巣」である。在ベルリン米国大使館の最上階の全フロアが監視・盗聴局となっており、2002年以来メルケル首相の携帯電話をターゲットとしていたという。
また、英国もドイツでスパイをしていたことも明らかになった。英国大使館が2000年から入居している、ヴィルヘルムストレッセの新ビルは、ドイツ議会とメルケル首相の執務室に近接しており、英国はここを拠点にスパイをしていたということだ*1。