米政府当局が「PRISM(プリズム)」というシステムを運用して、市民の通話記録やメール通信などの大量のデータを収集・監視していることが明らかになって以来、欧米のニュースサイトやソーシャルメディアでは数週間に渡ってその話題が大きく報じられている。

スノーデン氏をスパイ罪で訴追、米当局 香港に身柄拘束を要請

連日紙面に登場するエドワード・スノーデン氏〔AFPBB News

 この米国のスパイ活動を暴露した米政府機関の元職員エドワード・スノーデン氏の写真が連日どのメディアにもトップで登場し、少なくとも欧州では、米国がやらかした大失態が大々的に暴露されたニュースとして認識された。

 この間の報道を見ていて、一点、気になることがあった。

 問題が明らかになった当初は、米国の大がかりなスパイ事件に憤慨し、制裁を叫んでいた欧州中のメディアが、次第に勢いを弱め、国家のスパイ活動は正当であるという論調に変化していったように見える。

当初は米国の「スパイ行為」に憤慨した欧州メディア

 6月初めに米中央情報局(CIA)元契約職員のスノーデン氏により、米国の国家安全保障局(NSA)が世界中の電話とインターネット上のコミュニケーションを大量に盗聴・監視していたことが明るみに出た。

 英ガーディアン紙がスクープした、スパイ活動が行われている地域を示すいわゆる「ヒートマップ」によると、米国が従来の「敵国」だけでなく、長期にわたって友好国・同盟国と見なしてきたような国々もスパイの対象となっている。同紙によると、2013年3月だけで欧州全土で個人や機関、企業から30億以上のデータが集積されている*1

 欧州諸国全体が監視の対象になっていたわけだが、ヒートマップによると、特に欧州最大の経済大国ドイツが最も大量の情報を監視されている。

 この直後には、欧州の各メディアと政治家は米国の情報監視体制を批判し、このプログラムを認可したオバマ政権への失望も表明した。

 6月11日の欧州議会では、欧州委員会のトニオ・ボルグ委員(マルタ出身)がこの問題を取り上げ、「NSAのプリズムプログラムは潜在的に欧州連合(EU)市民のプライバシーとデータ保護に関する基本的な権利を侵害する」と述べた。

 彼はデータ監視とプライバシー保護は「きわどく平衡を保っている平等化法」に含まれると主張し、このスキャンダルが米欧間の「特別な関係」を損なうことがないことを願うとしている。つまり、正常な米欧関係を損ねるほどの大事件だと認識したということだろうか。 

*1http://www.guardian.co.uk/world/2013/jun/08/nsa-boundless-informant-global-datamining