前回に引き続き、子宮頸がん予防ワクチン(以下、HPV[ヒトパピローマウイルス]ワクチン)を取り上げる。

 2013年10月28日、厚生労働省の予防接種・ワクチン分科会の第4回副反応検討部会が開催され、4月から7月までに143件の重い副作用報告があったことが報道された。

 HPVワクチンはその安全性が問題視されるようになり、定期接種の中止にはなっていないものの、積極的な接種勧奨が一時的に差し控えられるという状態が6月以来続いている。

 定期接種のワクチンは原則無料となるが、HPVワクチン接種をどう扱うべきか臨床現場でも悩ましく、実際、筆者の外来でも接種希望で新たに来院する方はほとんどいなくなっている。

ワクチン接種後の副反応

 HPVワクチンで今特に問題となっているのは、接種後の痛み、しびれ、脱力などの副反応だ。これらの症状とHPVワクチンとの関連性は、科学的にはまだ明らかになっているとは言えないが、2013年10月11日には厚生労働省の研究班が診療体制を整備することを発表した。

 しかし、これ以外にも未知の副反応が今後判明する可能性は存在する。例えば最近では、オーストラリアとイスラエルで、HPVワクチン接種後の早発卵巣不全について症例報告がされている(BMJ Case ReportsWiley Online Library)。

 これも因果関係は現段階では十分に明らかになっておらず、今後の情報集積を待たなければならない。

 感染症予防のワクチンは非常に多くの健康な人を対象とすることに特徴がある。残念ながら、副反応が全くないワクチンを開発するのは今後も困難だろう。また、多数の人への接種経験が積み重なることで、非常に稀に生じる副反応が見つかる可能性は常に存在する。

 副反応がある程度生じることは織り込んだ上で、どの程度であれば有効性と比べ受け入れられるのかを冷静に判断しなければならない。

薬の「有効性」という用語

 では、HPVワクチンはどの程度の有効性があるのだろうか。

 薬について「有効性」というのはよく耳にするフレーズだ。若い医師たちと話をしていても「有効性が示されています」といって論文を持ってきてくれることはしばしばある。

 しかし、安直に有効性という用語に惑わされず、何を以って有効性があると言っているのか、その情報を読み解くには常に注意を払わなければならない。

 薬における有効性という用語は実に幅広い意味を含んでおり、病気が完治しなくても有効性があると幾らでも主張できるからだ。寿命がほんの少し伸びるだけでも、病巣が少し小さくなっても、はたまた検査の数字が少し改善するだけでも有効性があると言えるのだ。

 HPVワクチンは日本を含め世界中で既に承認され、有効性が認められると言われている医薬品ではあるが、その有効性の中身を詳しく考える必要がある。