前回までに、太陽光、風力、地熱、潮汐そして水力などの再生可能エネルギーは電力(一部蒸気)しか生成しないこと、そして再生可能エネルギーの中でも、液体燃料を取り出せるバイオマスエネルギーが有望であるが、穀物の澱粉から作るバイオエタノールは食料と競合するため、 主流となり得ないことを述べた(「世界全体ではマイナーリーグ以下の原子力発電」参照)。
木質資源を原料としたエタノールも製造可能であるが、熱量が低く、ガソリンの代替としかならない。それよりも、木質資源を原料としてガス化すれば、ディーゼルやジェット燃料を製造可能な(ガソリンも製造可能)バイオ燃料が製造可能となる。
ガス化工程ではワックスも生成し、化学原料となる。欧米では以前よりこの種の開発に熱心であること、特に米国ではバイオ燃料の確保を安全保障として捉えていることについても述べた(「米国で急速に開発が進む木質バイオマス」参照)。
豊かな森林資源を有効利用していない日本
さて、日本でのバイオ燃料の可否を論じる前に、日本における森林産業について考える必要がある。
製紙用の化学パルプを例に取る。化学パルプというのは簡単に言うと、木材中のセルロースと類似物質を取り出した製紙用原料である。それらは、木材中に約50%含まれる。
残りの50%は主に木材を直立させるための接着剤のようなもので、リグニンと呼ばれている。リグニンを水と薬剤と熱を使って、木材から溶かし出すことを化学パルプ工程と言う。
このリグニン成分を含んだ水溶液は、当然のことながら木材の成分であるから濃縮して燃やせる。このエネルギーで木材のパルプ化と薬品の回収をすべて賄えるのである。すなわち、石油は基本的に必要としない。
蛇足ではあるが、製紙工場では多量の石炭と石油を使用するが、これは古紙を再生する工程などで使用する電気や蒸気を発生させるためである。従って、古紙を利用すればパルプ資源の削減になるが、一方で化石燃料を使うため、全体的な省資源の最適化についてはよく考える必要がある。