国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書が今月下旬に発表される予定だが、その原案の要約版が各国政府に配布された。ロイターの報道によると、IPCCは地球温暖化の原因を人為的なものだとしているが、気温上昇の予想は以前より低くなっているという。本当に温暖化は起きているのだろうか? そして日本政府はどう対応すべきなのだろうか?

地球温暖化は止まった?

 第5次報告書の原案では「地球温暖化の原因が人間活動である確率は95%」としており、これは「90%」とした第4次報告書(2007年)より上がっており、66%とした第3次報告書(2001年)に比べると、ほぼ断定的に「人為的温暖化説」を採用したと考えていいだろう。

 ところが問題の気温は、それほど上がっているように見えない。右の図は、IPCCのメンバーの1人である江守正多氏(国立環境研究所)のデータだが、20世紀の半ばからじりじりと上がってきた世界の平均気温は、21世紀に入って上昇が鈍化し、今後の予想もIPCCによるモデル計算の下限ぎりぎりだ。

 これに対して温暖化懐疑派は「それ見ろ温暖化は止まったじゃないか。IPCCは政治的な目的で気温上昇を誇大に宣伝しているのだ」と批判し、寒冷化を予想する人もいる。しかし江守氏によれば温室効果ガスの排出量は増えており、それを打ち消す太陽活動の変化などが起きたために上昇が鈍化したのだという。

 IPCCの第5次報告書(案)でも、2100年に最低でも摂氏1度、最高摂氏5度の上昇が予想されている。これは第4次報告書の摂氏1.8~4度という予測に比べると幅が広がっているが、海面上昇は29~82センチと前回の18~59センチに比べて大きくなっている。