東京都内、しかも23区内となれば、言うまでもなく家賃がトップクラスに高い地域だ。地方から上京した人ならば、最初はあまりの「格差」に驚いたことだろう。

 しかしその23区内において、わずか家賃5万円台で一戸建てを借りている人がいる。借主は2階の2部屋で暮らし、1階は自身が運営する図書館になっている。もちろん大家に交渉した結果、好意の上での家賃だが、これだけ広い物件を、ワンルーム以下の家賃で月々借りているのだ。

 一体なぜ、このようなことが可能になるのだろうか。その背景には、現代の住宅事情に横たわる深刻な問題がかかわっていた。

増え続ける日本の空き家

 近年、日本の住宅において問題となっているのが「空き家の増加」だ。総務省の「住宅・土地統計」によると、1963年には52万戸だった空き家の数が、2008年には756万戸へと膨れ上がっている。総住宅数に占める割合(空き家率)も、2008年に13.1%と過去最高を記録しており、7件に1件は誰も住んでいない状況となっている。

 リクルートの不動産・住宅サイト「SUUMO(スーモ)」 の編集長・池本洋一氏は、空き家問題の原因の1つとして「税制の問題」を挙げる。

「SUUMO(スーモ)」 編集長の池本洋一氏

 「現行の制度では、家を壊し更地にすると、土地の固定資産税は最大6倍に跳ね上がってしまいます。これは戦後しばらく住宅が足りなかった時代の政策の名残なのですが、今ではそれが空き家を生む大きな原因になっているんですね。人口減少の時代に入っても新築住宅は変わらず生まれ続けていますから、当然、古い家は空いていきます。それらの空き家を、所有者が簡単に更地にしづらい状況が起きているんです」

 空き家が増えると、治安や景観の悪化、老朽化による災害時の倒壊など、様々な問題が生じる。対策としては、法などにより住宅の新築を抑制する方法もあるが、経済的な影響を考えると難しい。また、税制の見直しも空き家課税など議論は始まっているが時間がかかる。抜本的な解決を早急に行うのは、なかなか厳しいのが現実だ。