「この記録はややこしい数字」イチロー自身、こう語る日米通算4000本安打の大記録が達成された。ヤンキース伝説の強打者ルー・ゲーリックを超えるメジャーリーグ2722本目のヒットを放っての快挙である。
日本の野球はマイナーレベル?
「2つのリーグでの記録であり、(既に4000本打っている)ピート・ローズとタイ・カッブは1つのリーグでのもの。2人と同じ範疇で扱うべきではない」とイチローは語る。
一方、4256安打の記録保持者ピート・ローズの言葉は「王貞治とハンク・アーロンの本塁打記録を比較できないのと同じ。公平ではない比較だ」というもの。
米国では「マイナーでの安打数をメジャー記録に加えれば、ハンク・アーロン、スタン・ミュージアル、ジガー・スタッツの3人が4000本安打に達している」と、日本野球はマイナーレベルと暗に言いたげな論調も目立つ。
実際、日本へやって来る「助っ人ガイジン」を描いた『ミスター・ベースボール』(1992)を見れば、そんな心情も見て取れるが、21世紀のいま、現役メジャーリーガーが数多く日本球界入りし、大した成績も上げられず帰国することも珍しくないのだが・・・。
ところで、アーロンやミュージアルはともかく、ジガー・スタッツという名は聞き慣れない。それもそのはず、主に1920年代に活躍した彼のメジャーでのヒット数は737本と平凡で、安打の8割ほどはマイナーでのものなのだ。
『さよならゲーム』(1986)でケビン・コスナーが演じるのは、マイナーの通算本塁打記録を達成するベテラン捕手クラッシュ・デイヴィス。
実はこれ、マイナーでのプレイ経験のあるロン・シェルトン監督が、名鑑で見つけた実在の選手から借用した名前。
ただし、記録を打ち立てるほどでもない「平凡なマイナーリーガー」だった。そんなシェルトン監督は次の野球映画『タイ・カップ』(1994)にそのデイヴィス本人を出演させているのだが、それは野球殿堂入りの名外野手サム・クロフォード役だった。
もちろん映画はピート・ローズに次ぐ通算4189安打を誇るデトロイト・タイガースの名選手が主役だが、そのチーム内での好敵手がクロフォードだった。