米住宅市場、年内の回復は見込めず 専門家筋

リーマンショックで売りに出されたラスベガスの住宅〔AFPBB News

 金融危機で痛い目にあったはずの米国市民が、またしても同じ道に戻り始めた兆候がでている。

 1990年代後半から2007年夏頃まで、米国の商業物件や一戸建て、分譲マンションの価格上昇率は消費者物価指数(CPI)を大きく上回るペースで上昇していた。

 ところが住宅バブルは見事に弾け、同時に金融バブルも崩壊して、投資家だけでなく一般市民も資産を大幅に減らした。

「ニューノーマル」は幻だった?

 その教訓から、米国市民は「投資と消費が人生の目的」と言えるようなライフスタイルを変えるようにもなった。借金を減らして預金を増やし、身の丈に合った生活をする人たちが増えた。大手債権運用会社ピムコのモハメド・エラリアン氏は、そのライフスタイルを「ニューノーマル」と名づけた。

 それは国内総生産(GDP)の約7割を占める個人消費を減らすことになるとも思われた。カネを使うことで米国経済を動かすという消費の大車輪という考え方への反省でもあった。

 それまで、「今日で世界が終わりを迎えても構わない」といったライフスタイルがまかり通ってきた。そこに倹約という戦後の米国では初めてとも言える生き方が導入され、浸透していくかに見えた。

 だが今、米国経済が緩やかながらも回復しつつあると、再び消費支出が増え始めてきた。自動車販売と住宅販売の堅調な伸びがそれを物語っている。

 米国の一般世帯の月額平均支出も今年初旬4220ドル(約42万円)で、2009年の3870ドル(約38万円)より拡大している(インフレ調整後)。月平均の食料品への支出を見ると、2009年は269ドル(約2万9600円)だったが、今年は316ドル(約3万1600円)で17%も上昇している。

 それは同時に、米国人の拠り所とさえ言えるクレジットカードの借金が増え始めたことでもある。現在の借金総額は8471億ドル(約84兆7100億円)という巨費で、金融バブルのピーク時には達していないが、今のペースでいくと最高額を超えるのは時間の問題と言われる。

 消費の拡大は経済活動にとって大切なことではある。だが市民生活において、借金を増やしてまで消費し続けるライフスタイルは、米国を再び同じ道に戻すことにもなりかねない。