米国カリフォルニア州グレンデール市で7月30日、日本軍の慰安婦の像なるものが設置された。日本の将来に禍根を残す出来事だった。米国の他の各地でも同じ慰安婦像が建てられる気配がある。在米の韓国や中国のロビー勢力が組織的に進める反日の政治運動なのだ。
だが、今回のグレンデール市での「像」設置に際しては、地元の日本人社会代表たちの反対意見が明確に表明され、その声の内容は全米に知られることともなった。
日本人社会からのこうした意見表明は、米国を舞台とする慰安婦問題論議では初めてである。しかも、この草の根の意見表明は、近くの市での同種の動きにすでにブレーキをかけ始めたようだ。
米国でのこの種の日本糾弾の政治的な動きに日本はどう対応すべきなのか。その答えを模索するにあたって今回の現地日本人たちの言動は貴重な指針となりそうである。
政治家を味方にした中韓ロビーの組織
グレンデール市はロサンゼルスのすぐ北に隣接する人口20万人ほどの都市である。韓国系住民は5%ほどだが、その代表の活動家たちが中国系組織の支援を得て、2013年3月まで市長だったフランク・クィンテロ市議にアピールし、慰安婦像の設置を請願した。
4月にはクィンテロ氏を韓国に招待し、慰安婦だったと称する韓国女性たちに会わせたりしていた。韓国側の主張の前提は「日本軍は韓国女性ら20万人を強制連行し、性的奴隷として、いまもなお謝罪も賠償もしていない」という趣旨だった。
グレンデール市はその対応を決めるために7月9日に市議会で公聴会を開いた。事前に申し込みをした証人たちが個別に数分間ずつ意見を述べた。韓国系や中国系が圧倒するだろうと予測されていた。
ところが同公聴会では証人27人のうち20人までが像の設置に明確な反対を述べたのだった。その反対意見の表明者の大多数はグレンデール市内外に住む日本人男女だった。傍聴まで含むと同公聴会への参加は総数100人ほどだったが、うち7割が日本側の立場の参加者で、反対の意を議事の合間にも明示したという。これは前例のない未曾有の事態だった。
米国内で韓国や中国の意を体する勢力が超大国を利用して日本を攻めるという構図の慰安婦問題は、河野談話が出た翌年の1994年頃から始まった。
93年に出た「河野談話」は、証拠のない日本軍の女性大量強制連行説を自虐的に受け入れて謝るものだった。談話が出ると、当時の日本政府の弱腰に勢いづいたかのように、米国ではすぐに「慰安婦問題ワシントン連合」という組織が登場し、連邦議会や各大学での宣伝活動を始めた。「日本軍が20万人の性的奴隷を連行した」という非難である。