私はWeb広告研究会の代表幹事を務めている関係で、多数のマーケティング関係者に会い、その出会いの中で多くのことを学ぶことができる。これは非常にありがたいことだ。

 そして最近会う機会が増えたのが、日本新聞協会や折込広告の関係者といった、新聞業界の方たちである。みなさんの心配事は、新聞の将来である。

元CIA職員の告白報道に見る「新聞」の進化

 新聞の将来を考えるということは、新聞を取り巻く環境に変化があることを感じているということであり、健全な危機意識を持っているということだ。

 デジタルやITの進化は、「インターネットがもたらす物流の革新はチャンスかピンチか」でも述べたように、おそらく全ての業界でも影響がある。

 だから、今考えるべきことは、現在の仕事の仕方やサービスの提供を維持するのではなく、デジタル・ITと組み合わせることができる自分たちの本来の強みは何かを考えることなのだろう。そう思うのはなぜか、最近起きた事例を基に考察してみたいと思う。

スノーデン元職員、ロシアに一時的亡命を申請

香港市内で英紙ガーディアンとのインタビューに応じるエドワード・スノーデン容疑者〔AFPBB News

 最近の新聞報道から、世界的な問題になっているCIAの元職員エドワード・スノーデンのことについて振り返りたい。元職員の告白を報道したのは、イギリスの日刊新聞発行会社である、ガーディアン紙(The Guardian)である。

 そして、多くの日本人がこの件を知ったのは、ガーディアンの新聞紙面からではなく、「NSA whistleblower Edward Snowden: 'I don't want to live in a society that does these sort of things' – video」という、ガーディアンのWebサイトで公開されていたビデオを日本の報道機関がテレビなどで再配信したものである。新聞社の新聞記事ではなく、ビデオの映像だった。

 ここで重要なことは、デジタルの進化により、新聞社が自身のWebサイトでビデオ報道をできるようになったということである。映像というのは、確かに速報性もあり、そして何より元職員自身が話すことにより、情報の受け手は、透明性の高い報道だと思うだろう。

 本人のインタビューを記事にして、文字情報として新聞やWebサイトで公開することも可能だ。しかし、ビデオでは編集があるかないかが見ている人に分かりやすいため、信頼性が高いのだろう。だから、ガーディアンのWebサイトに掲載された本人のインタビュー映像を一つの証拠として、多くのメディアが報道を行った。

 そして、ガーディアンの企画はそれだけではなかった。6月17日に、Webサイトで読者から直接質問を受け付けている。ここでも、今までの新聞社ではできないが、Webサイトという空間では行える、読者の疑問点を解消させる企画を打っているのである。