北朝鮮が3回目の核実験を行い、原子炉の再稼働を発表し、弾道ミサイル発射の予告をして関係国を慌てさせたのはつい数か月前のことである。核実験やミサイルの発射予告などがあれば大騒ぎをするが、ことが終わり、または兆候が薄れると何事もなかったかのように忘れてしまう日本の能天気ぶりである。

北朝鮮、米国に高官級会談を提案

好戦的と言われる北朝鮮の金正恩総書記(中央)〔AFPBB News

 G8諸国と比較して、国民1人当りの自衛隊員はほぼ半数で、装備密度も低い。そのため、隊員ばかりでなく装備数も少なく、北朝鮮のミサイル弾道が南西方向に予測されれば九州・沖縄方面にミサイル防衛(MD)システム(イージス艦やPAC-3)を布陣する。

 弾道の予測がつかなければ首都圏中心に配備され、配備されない日本の大部分は、ミサイルが飛んでこない僥倖を祈る以外にない。これが日本の現状である

 北朝鮮の数発どころか、中国は100基を下らない核ミサイルを配備して、普段から日本に照準を合わせている。このように敵性をむき出しにしている国家がすぐ近くにあるのに、日本は憲法を盾に何もできない。米国もその照準を外させることはできない(R・アーミテージ、J・ナイ、春原剛共著『日米同盟vs中国・北朝鮮』)という。

 中朝は核ミサイルを背景に米国への圧力を強め、日本の孤立化を策謀しているが、日本は無邪気に米国の「核の傘」を信奉するだけである。防衛の不備を報道するマスコミはなく、国民の関心(不安に思う心)は高まらない。これは何も中朝の核ミサイル対処ばかりでなく、専守防衛や集団的自衛権なども含めた安全保障全般について言えることである。

朝鮮半島の核問題

 従来、北朝鮮は「ウラン濃縮は電力生産のための低濃縮で、平和利用が目的」であると主張してきた。しかし、金正日が核実験を2回実施し、生前「ウラン濃縮型核兵器の大量生産」を指示していたとする朝鮮労働党の内部文書が明らかになり、平和利用の主張は完全に覆された。

 それもそのはず、何かことが起きると「韓国を火の海にする」という捨て台詞を吐くのが常であったが、その背景には、核開発を着々と進めてきたからである。

 今年2月行なった第3回目の核実験は小型化、長射程化を目指すものとして注目された。これを手にすることによって米国への脅しは現実味を増し、交渉の場にも引き出しやすい。日米を分断し、日本からは援助物資などを手に入れる算段であるとも見られてきた。

 米国がなかなか乗ってこないと見るや、「ワシントンを火の海にする」とまで豪語するようになった。ほぼ1か月間続いた4月の緊張では、いささか化けの皮が剥げた感が見えた北朝鮮であるが、核兵器の小型化やミサイルの長射程化を一歩一歩進めていることは確かであろう。

 とにもかくにも緊張を煽り、相手をあたふたさせる。その後に柔軟姿勢を見せる。これが北朝鮮の繰り返してきた戦略である。緊張―緩和を繰り返して時間を稼ぎ、実戦兵器への道を確かにしている北朝鮮である。

 早晩、米本土が射程に入る段階になると見られ、米国も従前ののんびりした姿勢に比べ、かなり真剣な対応をするようになってきた。

 日本が留意しなければならないことは、韓国で核武装論が高まった時、李明博前大統領が「核武装論は愛国的な考えということで高く評価し、北朝鮮や中国に対する警告にもなる」として肯定していた点であろう。