5月5日の選挙結果の不正に抗議するため、マレーシア全国に抗議集会「ブラック(Black)505」が広がった。

 与党連合の金権汚職政治を糾弾する野党側は、公正な選挙を求めるNGO組織「BERSIH2.0」(共同会長:アンミガ氏)およびパカタン・ラクヤット(PR、人民同盟)を土台にし、「Bersih(マレー語で“クリーン”の意)」をスローガンに掲げている(連載第1回はこちら、第2回はこちら)。

米・仏両政府が推すアジアのジャンヌ・ダルク

“アジアのジャンヌ・ダルク”、「BERSIH2.0」の共同会長で弁護士のアンミガ氏(筆者撮影、以下、特記のないものは同様)

 アンミガ氏は、米のヒラリー・クリントン前国務相や仏政府から、その精力的な人権活動等に対する名誉ある賞を授与されており、マレーシア弁護士会会長も務めてきた。東南アジアで屈指の論客としても知られる。

 数々の難訴訟を自ら手掛け、“鉄の女”のイメージがつきまとう彼女だが、実際はとっても気さくで、物腰の低さが印象的。講演等のあとには、必ず壇上から降りてきて聴衆と対話する、まさに「マレーシア、アジアのジャンヌ・ダルク」と呼ばれてきた。

 6月22日の抗議集会での演説後にインタビューした筆者に対し、彼女は「民主化には時間がかかる。しかし、違法行為に対しては『法』の行使を諦めず続けて行い、必ず、その成果を民主化につなげていきたい」と意気込みを語った。

 また、日本政府も含め、諸外国が新政権を承認していることに対して、「政治的な判断は諸外国に委ねられるが、我々はその違法性を立証できる証拠をつかんでいる」ことを強調。

「不正選挙の証拠入手」を強調する野党側

 アンワル元副首相も言及する“その証拠”をいつ公表するかが注目されるところだが、「9月22日に公表予定だ」と初めて公表日について明らかにした。

 5月8日以降、特に絶対数の多いマレー系支持者を主体にマレーシア全国で展開されてきた抗議集会「ブラック(Black)505」も6月22日で、いったん区切りをつけるという野党側。6月24日から新ナジブ政権下での国会が開始されたこともあり、闘いの場は広がり、さらにヒートアップする。

 この日演説したアンワル元副首相は「選挙委員会は、明らかに『特権乱用』で、全くの『無能』。今後も引き続き、国会の中と外の両側から、金権汚職政治の撲滅を目指し、選挙制度改正を勝ち取るまで戦い続ける。Rakyat(マレー語で“市民”の意)が勝利を手にするまでは! 」と闘志を新たにした。