中国企業による米自動車産業のメッカ、デトロイトへの進出が加速している。しかも殴り込みというより、静かに事業を拡大している姿がむしろ脅威でさえある。
中国の業界大手、上海汽車は6月、ミシガン州バーミングハム市に北米オペレーションセンターを起ち上げた。上海汽車はすでに米ゼネラル・モーターズ(GM)と合弁事業を進めているが、合弁相手のGM関係者もその動きを知らされていなかった。同センターでは100人以上の現地スタッフが採用される予定だ。
ビッグ3のエンジニアを買い漁る中国メーカー
リーマンショック後、ビッグ3の中ではフォードを除くGMとクライスラーが経営破綻し、多くの失業者を出した。
両社は米政府による財政支援によって復活しているが、多くの従業員が解雇された。今でも全員が再雇用されたわけではない。解雇組の中には経験豊かなエンジニアもいる。
中国企業はそうした技術者に狙いをつけて雇用し始めている。
地元では雇用が創出されることを歓迎するが、中国企業側は1970年代から80年代にかけて日本企業が犯した過ちを繰り返さないつもりだ。つまり、米国側に中国が攻めてきたと思われないように、派手な動きを控えているのだ。
ジャパン・バッシングならぬチャイナ・バッシングを回避する狙いがある。
中国側による動きはそれだけではない。今年1月、中国の自動車部品メーカー最大手の万向集団が、米リチウムイオン電池ベンチャー企業、A123システムズを買収した。
この動きは皮肉と言わざるを得ない。何しろバラク・オバマ大統領がA123システムズに助成金を充てて、成長を期待していたからだ。同社はオバマ政権が推しているグリーン・ニューディール政策の期待の星で、米エネルギー省は2億4900万ドル(約238億円)もつぎ込んでいた。
例えばBMWのハイブリッド車「ActiveHybrid3」 「ActiveHybrid5」やGMの電気自動車「Chevloret Spark EV」などの車載リチウムイオン電池を作っていた。その企業が中国企業に買収されたのである。