「南関東から来る旅行者は“直行直帰”型。函館を訪れても周辺は回らず、市内だけで行動する・・・」
「北海道民が夏に旅行で目指す定番は、旭山動物園ではなく、積丹半島のウニだった!」
驚きの声とともに次々と明らかになっていくのは、今まで見えてこなかった「リアル」な旅行者の動向だ。
このように旅行者の足跡を詳細に追い、動向を分析することで、旅行パックや地方イベントの企画に生かす。そんな地域活性化の新たな試みが登場している。
なぜ旅行者の足跡を詳細に追うことができるのか。そこで活用されているのが、いま注目を集める「ビッグデータ」だ。ビッグデータは地域活性化への有力なツールとなり得るのか、その詳細に迫った。
「隠れた名所」が隠れてしまう理由
全国に秘湯と呼ばれる温泉は多いが、金属の腐食により備え付けのテレビが壊れるほどの強酸性を誇るのが、北海道は弟子屈町にある「川湯温泉」。温泉街全体で「源泉掛け流し宣言」をうたい、北海道民に親しまれる名湯だ。しかし、なぜか道外にはあまり知られていない。文字通りの「秘湯」だ。
「全国には、このように地元でしか知られていない名所がたくさんあります。しかし、旅行業界ではなかなか目を向けられることがありません」と話すのは、リクルートライフスタイルじゃらんリサーチセンターの主席研究員、加藤史子さん。
地元で人気があれば、観光名所となる可能性を秘めていると言えるはずだ。しかしそれらが全て旅行商品化されるとは限らない。加藤さんはその理由について、「旅行会社を介さずに直接、交通手段や宿泊施設などを手配する個人旅行が増えているため、その動向が把握しづらくなってきているのです」と話す。