レオナルド・ディカプリオ主演の『華麗なるギャツビー』(2013)が先週末から劇場公開されている。5度目の映画化となるその原作は、米国文学史上最高傑作との声もあるF・スコット・フィッツジェラルドの「The Great Gatsby」。2006年には村上春樹の新訳版も出ているから、以前より日本での知名度も上がっているかもしれない。

1920年代の映画に最新ヒップポップの組み合わせ

華麗なるギャツビー

 この映画、その文学性はもとより、舞台となった1920年代の米国の風俗が感じ取れることが大きな魅力だ。とはいえ、音楽には当時の曲はごくわずかしか使われていない。

 ジェイ・Z、ビヨンセ、カニエ・ウェストといった最新のヒップホップが中心なのだ。

 その点、1920年代の雰囲気たっぷりに当時のヒット曲のオンパレードだった40年前のロバート・レッドフォード版の方がピンとくるかもしれないが、最新のヒップホップが意外にも結構マッチしているのである。少々過剰気味の音圧には辟易するかもしれないが・・・。

 物語はよく知られたものである。簡単に言えば、貧しい家の出の男のアメリカンドリームが、金銭的には成就しても、育ちの違う女性との愛の夢には破れるというもの。

華麗なるギャツビー(ロバート・レッドフォード版)

 貧農の家に生まれたギャツビーは、第1次世界大戦中、良家の令嬢と恋仲となり婚約。しかし、戦後、富豪と結婚してしまった彼女の愛を再び自分のものにしようと、自らも大金持ちとなって再会を果たしてからの物語である。

 そんな主人公たちが、夜な夜なパーティーに明け暮れる姿が、ド派手な音楽と映像で描かれるこの映画。それは「ジャズ・エイジ」と呼ばれた1920年代の米国の姿であり、その言葉の名付け親でもあるフィッツジェラルドの生涯そのものでもある。

 彼自身、アメリカンドリームを追い求め、成功を収めたかのように見えながら、多くの悲劇に見舞われてきたからである。

 ミネソタ州セントポールに生まれたフィッツジェラルドは、生活に困ることこそなかったものの、裕福とも言えない家庭に育った。有名作家となる志を持ってプリンストン大に入学するも中退、米国が第1次世界大戦に参戦すると入隊した。

 そんな時、ゼルダという南部の良家の娘と出会い婚約する。ところが、戦後、安月給のコピーライターとなった彼の生活力を疑ったゼルダは婚約を破棄する。失意に沈むフィッツジェラルド。