海外投資に少しでも関心をお持ちの方であれば、「イスカンダル計画」の名前は聞いたことがあると思う。シンガポールと海峡を挟んで面しているジョホールバル一帯に巨大都市を建設しようという、マレーシア政府とジョホール州政府が積極的に進めている一大開発プロジェクトだ。

夢物語のような開発計画に驚かされる(写真提供:筆者、以下同)

 総投資額10兆円、計画人口が300万人と聞けば、その規模の壮大さがお分かりいただけるのではないかと思う。

 このイスカンダル計画に関連して、その地域に建設されるコンドミニアム(日本でいうマンション)や、一戸建て不動産に投資しませんかという話が、日本人の投資家に向けてかなりの規模で宣伝されている。検索エンジンで「ジョホールバル」と検索すれば、そういったWebサイトが大量に出てくる。

 果たしてこの巨大プロジェクトは成功するのかどうか、日本人投資家はうまみを得ることができるのかどうか。何回か現地を取材した内容をもとに考察したい。

投資環境は整備されているマレーシア不動産

 ジョホールバルに限らず、マレーシアの不動産投資環境はかなり整備されている。一定の金額以上のコンドミニアムや一戸建て不動産であれば、非居住の外国人であっても購入可能だ。

 マレーシアは旧イギリス領ということもあり、法体系はしっかり整備されており、権利関係がおかしくなるというようなこともあまり考えられない。また、HSBCなど現地の金融機関が最大で85%程度まで融資をつけてくれる。だから、少額の資金を出すだけで、融資を受けてレバレッジをかけて投資することもできるわけだ。

 あとは、購入したコンドミニアムが賃貸に出した場合にお金を生んでくれるかどうか(インカムゲイン)、また価格自体が値上がりするかどうかだ(キャピタルゲイン)。

 楽観的な見方としては、高度成長に沸くシンガポールの状況から、早晩土地不足が問題となり、人も企業もおカネも溢れ出してきて、ジョホールバルがその受け皿になるというものだ。いわゆる香港の後背地としての深センが急成長した夢をもう一度ということだ。

 しかし、そのようにいくものだろうか。また、それは何年後くらいにそうなるのだろうか。その可能性を、いくつかの点に分けて検討したい。