5月下旬以降、アベノミクスに対する期待が揺らぎ始めている。6月5日に安倍晋三総理が発表した成長戦略第3弾の中に、期待されていた法人税減税、社会保障関係費の削減等財政立て直し策などが盛り込まれなかったことから、株式市場は失望売りを浴びせられ、株価がさらに下落した。

安倍首相、国民所得150万円増も「成長戦略」 達成の道筋は示せず

都内のホテルで成長戦略について講演する安倍晋三首相(2013年6月5日撮影)〔AFPBB News

 アベノミクスの最終目標は日本経済の回復である。そのためには、日本企業が活力を取り戻すことが必要である。日本企業と言ってもさまざまであり、市場競争は優勝劣敗である。競争力の強い企業が生き残り、競争力が弱い企業は市場から退出を余儀なくされる。その市場競争における淘汰を通じて競争力の強い企業の比率が高まれば日本経済全体の競争力も向上する。

 赤字企業が大半を占める現在の状況下では、法人税減税は恩恵を受ける企業が少ないとの見方があるが、厳しい経済情勢下でも黒字を出せる競争力の強い企業を一段と強化することは日本経済の競争力強化にとって極めて有効である。

上海モーターショーが象徴するグローバル企業の中国重視戦略

 日本企業が国内市場の中だけで経営を続ければ、成長の余地は限られる。法人税を納めることができる競争力のある日本企業が海外市場にチャレンジすることが日本経済回復の重要なカギとなる。ただし、海外市場での競争は激しい。

 特に世界で最も速いスピードで拡大し続ける巨大市場を持つ中国は世界のトップ企業が押し寄せるために競争も激烈である。しかも、この2~3年は競争が一段と激化している。先進国市場の伸び悩みが続く中、中国人の購買力が拡大し、高付加価値の製品・サービス市場が急速に拡大しているためである。

 それを見て、中国市場開拓に対する世界中の有力企業の力の入れ方が変わってきた。グローバルブランドの自動車メーカー各社が中国市場を最重視するようになり、北京や上海で開かれるモーターショーが日米欧での開催規模を超えて質量とも世界一となったことが象徴的な変化である。

 中国国内市場での顧客はもちろん中国人であるが、日本企業にとってのライバル企業は欧米韓国等の超一流企業である。その世界で最も厳しい競争の中で生き残るには日米欧の先進国市場での努力を上回る努力とチャレンジが必要である。

 中国市場は短期間に急速かつ大幅な変化を遂げた。2004年以前の中国市場は安くて豊富な労働力が魅力だった。当時の中国の位置づけは工場である。

 2004年当時の中国の1人当たりGDPは1500ドル前後と低かったため、先進国の企業は中国国内で生産はできても販売できる市場は存在していなかった。2005年以降、中国は世界中の輸出企業が集中した結果として輸出競争力が急速に高まり、貿易黒字が急増した。