前回のコラム(「心しておくべき2030年の日中軍事バランス 中国の軍拡で迫る日米同盟の危機」)では、中国の軍拡が日本の安全保障や日米同盟の機能に与える影響を分析した報告を紹介した。この報告とは、米国の大手シンクタンク「カーネギー国際平和財団」が長期にわたって行った大規模な研究を総括したものである。

 その結論として打ち出されたのは、「2030年頃には中国の軍事パワーが、日本の防衛力も、日米共同の抑止力をも圧するようになり、日中間での紛争案件が中国の軍事優位によって、中国の求めるように決着してしまう、という状況が最も確率が高い」との予測だった。

 「中国が軍事能力を強大化することによって、日本との紛争は競合の案件を軍事力を実際に使うことなく、中国にとって有利に解決してしまう展開になる」というのである。当然、まず中国が尖閣諸島を有無を言わさず奪取することが考えられる。

日米同盟の長期的な利益を前進させるための3つの対応

 では、日本あるいは日米両国はこんな展望に対し、どうすればよいのか。

 この展望は、日本にとってはもちろんのこと米国にとっても好ましいシナリオではない。そんな可能性が予測されるならば、その実現を防ぐための措置が取られねばならない。この報告は、日米両国が打ち出すべき政策についても提言していた。

 その提言とは、以下のような骨子である。

 「全能の解決策はあり得ない。いかなる同盟でも、当事者すべてを一気に満足させ、軍事、政治の領域での好ましい均衡状態をもたらす単一の対応は不可能である。地域の安全保障の状況を改善するどの対策も、なんらかの犠牲や苦痛を伴う。選択によっては日米両軍の役割や任務を劇的に変えてしまうような大規模な修正もあり得る」

 報告はその政策提言として、「日米同盟の長期的な利益を前進させるために考えられる政治・軍事面での3つの対応」を具体的に挙げていた。