今年のゴールデンウイークは例年になく日ロ関係に注目が集まった。いまさら言うまでもなく4月29~30日の安倍晋三首相が10年ぶりにロシアを公式訪問、ウラジーミル・プーチン大統領との首脳会談のおかげである。

 クレムリンでの共同記者会見がNHKや民放ニュース番組で生中継されるなどロシア以外の国では滅多に見ることのできない大きな扱いである。

政治的な問題解決と経済は別物

 筆者のところにも、「今回の公式訪問の成果をどう評価しますか?」という質問がいくつか寄せられたのだが、筆者は日ロの政治関係には見識を持ち合わせていないのでコメントする立場にはない。聞き手は、当然のように肯定的な回答を期待していたのだろうが、申し訳ない限りである。

 ただ、経済関係に関しては確たる見解を述べている。訪問の前後で客観的な状況は何も変わらない。それは至極当たり前のことで、これまで日ロ間に領土問題が存在すること、あるいは平和条約が存在しないがゆえに日本企業が欧米諸国に比べて不利益を被っているわけではない。

 また、これらの政治的な問題が解決したからといってロシアが日本に対して他国よりも有利な待遇を与えるわけでもない(ロシアは世界貿易機関=WTO加盟国である)。

 変わるとすれば、日本の経済界のロシアに対する見方という極めて主観的な要素である。 まあ、「期待」への働きかけを得意とするアベノミクスのお手並み拝見ということになろうか。

 従って、この日本の経済界の「期待」を変えるという意味では、120人余の財界人を同行したことは大きな意味がある。ロシアはもはやソ連ではないし、1990年代のロシアとも大きく異なるという、当たり前の事実を多くの日本の財界人が現地を訪れ、直接見聞した意義は大きい。

 また、日本から勇んで乗り込んできたメディアにとってもロシアを実感するよい機会だったと思える。歴史的な記者会見で、大統領から直接苦言を呈される機会も日本の記者にとっては得難い経験であろう。

 もっとも、その「期待」の変化がロシア側にまで及ぶかと言うと、正直なところ期待薄である。ロシア人はビジネスに関しては「せっかち」である。今回、サインされた合意文書のうち何件がリアルビジネスとなるのか、それによって期待はポジティブにもネガティブにも変化する。

 ともあれ、今回の安倍首相訪ロは経済使節団としてはこれまでになく成果があったことは事実である。それだけに今回の合意文書を読んで、筆者の個人的見解として次の2点が悔やまれる。