欧米に遅れること10年以上、日本の住宅にもようやく2重窓が普及し始めた。しかし、実はせっかくの2重窓による大きな断熱効果も、意外なところに盲点があった。サッシである。
日本の住宅はアルミサッシがほとんど。アルミは金属の中でも軽くて加工がしやすいため、住宅の造り手には格好の材料だが、エアコンの熱交換器に使われているように、熱を極めて通しやすい特徴がある。
このため、せっかく2重窓にしてもこの部分から熱が大量に逃げ出してしまう。そういう理由もあって日本では2重窓の普及が遅れたとも言える。しかし、最近のエコ住宅への関心の高まりが、この分野の進化を促し始めた。
木製サッシの普及が始まったのだ。ここに木が使われるようになると、窓自体のさらなる進化も促す。窓を2重ではなく3重にしたり、ガラスとガラスの間に特殊なフィルムを入れたりして、徹底的に断熱効果を上げるようになってきた。
一方ではサッシの美しさにもこだわるようになってきた。山形県米沢市で金山杉などを使った木製サッシを作る木製サッシメーカーのアルスでは、今こなし切れないほどの注文が入っているという。まだコストが高いという欠点があるが、需要が本格化すれば、コストも大幅に下がる可能性がある。
木製サッシの将来についてアルスの高橋光雄社長に聞いた。
世界のサッシは木製が主流。アルミ一辺倒の日本は窓もガラパゴス
川嶋 木製サッシを始められたのは2000年だということですが、それまでは何をされていたんですか。
高橋 建具屋です。父が会社を起こしたのは1957年で、今の場所に引っ越して社名をアルスにしたのは93年。その後、2000年にドイツから機械を入れて木製サッシを始めました。
93年以前は小さな木工所でしたが、当時はまだ公共事業の仕事がけっこうあったんです。中学校などに室内建具を入れたりというボリュームのある案件も少なくなかった。こちらに移ってからもしばらくはそういう仕事をやっていました。
しかし、移転する前から合板、つまりベニヤを使った建具がだいぶ増えてきていました。本来は木の建具屋なのに合板の建具屋になっちゃってたんですね。
合板はホルムアルデヒドが出るもんですから、工場の中で合板を切るとむせ返る社員が出てきました。細かい粒子が舞い上がって、それが喉に刺さって咳が止まらない。