世宗市の政府庁舎のすぐ近くにはレストランやカフェもある高層アパートも建設ラッシュで人気を呼んでいる

 朝の8時前にソウルを出た車は、これといった渋滞にも合わず高速道路をびゅんびゅん飛ばして走る。ソウルから南に2時間。のどかな農村を抜けると、突然、できたばかりでがらがらの高速道路に入る。トンネルを抜けるとそこは別世界だった。

 あちこちに工事中のクレーンが見える。そして、巨大な建物群が目に入る。これこそ、新しい韓国政府の世宗(セジョン)総合庁舎だった。

 「いや、ここは1週間のうちに町の姿が一変してしまう。すごいことですよ。あそこに見えるのが高層アパート、ここにはデパートを造っています。この工事? 何だったかな? そうだ、国税庁のビルだった」

 ソウルから南に120キロ。忠清南道に2012年7月にできたばかりの世宗特別自治市。ここで今、ソウルに続く韓国の「第2の首都」の建設が進んでいる。2012年末に世宗市「常駐」になった大手紙記者は、市内を車で案内しながらこう話してくれた。あちこちでクレーン車やブルドーザーが動き回るすさまじい光景だった。

 韓国政府はいま、大規模な引っ越し作業中なのだ。中央省庁のうち、すでに国務総理室、企画財政部、環境部など6省庁が順次移転を済ませている。案内してくれた記者によると、「5000人近くの公務員が世宗市に移ってきた」という。

静かな農村に政府機関や大学が一気に移転

 現在も庁舎の建設工事がどんどん進んでおり、2014年までに36の行政機関と16の研究機関などが移転する。公務員だけで1万5000人がわずか2年間でソウルから世宗市に移ってくる計画なのだ。

 ソウルに残ることが決まっているのは、大統領府(青瓦台)、外交部、国防部、統一部などわずかな省庁だけ。ほとんどの経済関連省庁と機関、教育、文化関連省庁、機関が全部、わずか数年前まで静かな農村だった地区にやって来る。

 それだけではない。高麗大など韓国でも有数の大学が、世宗市やその周辺に新キャンパスを建設する。国際学校や病院、さらに大規模商業施設の建設計画もある。

 政府は、世宗市を建設するために7300万平方メートル(約2200万坪)もの広大な土地を5兆ウォン(1円=11ウォン)を投じて取得した。さらに庁舎などの建設費用として17兆ウォン以上を投じる。すでに土地取得費用と合わせて10兆ウォンを使っており、この「引っ越し計画」はもう後戻りのできないプロジェクトになっている。

 世宗市ができる前には、人口は1万人足らずだった。だが、わずか2~3年後には人口20万人の都市が出現するのだ。