韓国のメディアに安倍晋三首相が登場しない日はない。靖国問題など政治や歴史問題を批判的に報道する例もあるが、「アベノミクス」が圧倒的な関心事だ。
急速に進む円安・ウォン高で産業界からは悲鳴も聞こえる。低成長が続く韓国経済にとって、衝撃的な政策なのだ。
ソウル中心部のショッピング街である明洞(ミョンドン)。筆者はほぼ毎日のようにここで昼食をとる。
日本人観光客が必ず訪れる場所でもあり、以前ならあちこちで日本語を話す観光客がいた。昼食後、コーヒーショップで注文をしようとしたら、並んでいた人が全員日本語で話していたこともあった。
ところが、昨年秋以降、日本語を聞く機会ががくんと減ってきた。
激減する日本人観光客
2012年8月に李明博(イ・ミョンバク)大統領(当時)が突然、竹島(韓国名・独島)を訪問して日韓関係が悪化したことを機に減少に転じた日本からの観光客は、その後も回復するどころか、減り続けている。
ある観光会社の社長は「円安・ウォン高のせいだ」と言う。
韓国政府の統計によると、2012年8月の日本人入国者数は35万人だった。ところが、9月は30万人、10月は27万人、11月は25万人、12月は23万人、2013年1月は21万人と一本調子で減り続けている。
3月は春休みの旅行ピーク時にあたり29万人となったが、2012年に比べると20%の減少だった。日本人に支えられてきたホテルや商店は大きな影響を受けている。
「朝鮮日報」(2013年4月27日付)に興味深い記事が載った。円安・ウォン高のあおりで、「ビッグマック」などの価格の「日韓逆転現象」が起きているという。