現代の日本の、そこそこ以上の規模の会社で、派遣社員、契約社員など、いわゆる非正規雇用された社員がいない職場は稀でしょう。非正規社員の戦力化に悩んでおられる管理職の方も多いようです。

 ところがリーマン・ショック以降、特に顕著な気がしますが、正社員による非正規社員への差別があちこちで行われているようです。

 賃金の安さはもともとの契約で定められていますから、正社員同様とはいかないのは致し方ありません。しかし、机やロッカーを与えない、正社員が派遣社員に対して侮蔑的な発言をしたりするのは、派遣社員のモチベーションを下げこそすれ、上げることはないのではないでしょうか?

自分を侮蔑する人間のために戦おうとは思わない

 <およそ軍隊の名指揮官とか、優れた政治家は、自分たち同士の間にせよ、敵に向かっている場合にせよ、市民や兵隊がこのような侮辱や罵詈雑言を都市または軍隊で吐かぬよう、あらゆる手立てを講じておかねばならない。>
(『ディスコルシ 「ローマ史」論』、ニッコロ・マキァヴェッリ著、永井三明訳、ちくま学芸文庫)

 

 マキァヴェッリは、人間が取り得る何よりも賢い態度は、相手を脅かしたり侮辱したりしないことだと言っています。そんなことをしても決して敵の力を弱めたりできないし、味方を強くすることもできないからです。

 まず敵を侮辱すると、一般に敵はますます強くなります。本連載の第37回「沖縄の『独立』を日本は止められるか」でウェイイ人とローマ人が戦った時のことを書きました。内紛に苦しんでいたローマを見て、「今ならローマの力は弱まっている」と踏んだウェイイはローマに戦いを挑みますが破れました。