ゲームソフト大手、米エレクトロニック・アーツ(EA)のジョン・リッキティエロ最高経営責任者(CEO)がこの3月末をもって辞任することになった。理由は業績を回復できなかったことに対する責任。今後同社は後任のCEOを探すが、それまでの間、2007年までCEOを務めたラリー・プロブスト会長が経営トップに就き、同社を率いていくという。
プロブスト会長は、1991年から2007年までのCEO時代、年間売上高を1億7500万ドルから30億ドルにまで増やした実績を持つ人物。同社は当面、経営戦略や業界動向に深い知識を持つ同氏の指揮の下、盤石の経営基盤を築いていくとしている。
今期の業績、事前予想を下回る見通し
一方で同社は、5月に発表する1~3月期の決算で、売上高と1株利益が事前予想の下限になるか、下限を若干下回る恐れがあると発表した。
米ニューヨーク・タイムズによれば、これは同四半期の売上高が1年前から28%減の11億8000万ドルとなり、アナリスト予想を下回ることを意味している。
そもそもこうした同社の業績不振は、辞任するリッキティエロ氏が怠慢だったというわけではなく、激しく変動するゲーム業界の市場環境によるところが大きいと言われている。
米ウォールストリート・ジャーナルは、EAの今回の発表を受け、リッキティエロ氏にとっては6年間に及んだ試行錯誤の日々が、ようやく終わることになると伝えている。据え置き型家庭用ゲーム機用ソフトを主力事業としてきたEAは、消費者の嗜好(しこう)の変化によって、経営が脅かされてきたからだ。
かつて、巨額の費用を投じて重厚なゲーム作品を開発し、それが高値で大量に売れるという時代があった。しかしそれも今は昔。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やスマートフォン、タブレット端末が普及するようになり、消費者の好みは手軽で、時間を取られない、安価なゲームに移っていった。
例えばフェイスブック上で遊べるゲームを提供する米ジンガが台頭し、EAの顧客や従業員までも奪っていったとウォールストリート・ジャーナルは伝えている。
6年間に及んだ試行錯誤に終止符
ただ、リッキティエロ氏もこうした変化に手をこまねいていたわけではない。
EAはSNS向けゲームを手がける英プレイフィッシュを約3億ドルで買収。2011年は同じくSNS向けゲームの米ポップキャップ・ゲームズを13億ドルで買収している。