スペインとフランスの国境沿い、カタルーニャ自治州のバルセロナで開かれたモバイル・ワールド・コングレス。
生粋のカタルーニャ人である旧友が言う。
「我々はスペインから独立したいんだ」
旧市街バルセロネータ(Barceloneta)のバーでバスク地方のピンチョスをつまむ。チョリソーやハムとチーズの揚げ物がメインだ。大型テレビではバルサ対レアルの生中継が白熱している。店内はカタルーニャ語の熱気で満杯だ。
翌日。旧市街を抜けモダンなビルが立ち並ぶヨットハーバー沿い。シルバーに輝くひときわ高い高層ビル。そのなかにある五つ星のホテル・アーツ(Hotel Arts)で、アメリカの非営利団体モジラ(Mozilla)が記者会見を開いている。
今年のバルセロナで発表された、Firefox OS のスマートフォン
茶色と白で統一されたモダンな内装のレセプションを過ぎ、ガラス張りの階段を地下に降りると、既に世界中から集った記者でホールが満杯だ。
人混みのなか、シャンペンが載ったボードを手にしたボーイが駆け巡る。
壇上では、すでにモジラのゲイリー・コバックスCEOがFirefox OS製のスマートフォンについて語り始めていた。横には世界のケータイ(携帯電話)キャリア幹部が勢揃い。彼らは Firefox OS を脱Android、iPhone戦略の切り札と捉えているのだろうか。
紺色のスーツにブルーのシャツ、ショートヘアのドイツテレコムCEO、レネ・オベルマン氏(Rene Obermann)は、壇上に座るケータイキャリア幹部のなかで唯一ネクタイを締めていない。颯爽とマイク台に立ち、英語で発表した。
「ドイツテレコムは、ポーランドでアルカテル社製のFirefoxフォンを発売する」
彼は、昨年のバルセロナで「我々はダムパイプにはならない」と力説していた。ダムパイプは Dumb Pipe、つまり通信回線だけを提供するつまらない会社という意味。
そして「ダムパイプ」にならない戦略は「クラウドをユーザーに提供する」ものだった。正直あまりピンとこなかった。