中国は日本に対し、動物を人間に服従させるように命ずることに反すれば罰の仕置きを加え、従えばエサを与える「調教方式」を取っている――こんな考察が米国の2人の著名な中国研究学者たちにより発表された。

 つまり中国共産党政権は、日本側で中国に同調する政財界の勢力には様々な形で報奨を与え、逆に中国の路線に反対する側には種々の懲罰を加えるというのである。まさにアメとムチの戦略だと言えよう。中国当局はその戦略の実施に際しては、中国の民衆の民族主義的な反日感情を最大限に利用するというのだ。

「天安門文書」公表の立役者、ネーサン教授

 中国の政治研究で知られるコロンビア大学のアンドリュー・ネーサン教授と中国軍事研究の権威のランド研究所のアンドリュー・スコベル上級研究員は新刊の共著『中国の安全保障追求』で中国の対日戦略への考察を述べた。

 同書は「中国は日本を調教する」という題の章で、まず中国当局が日本を「ほぼ永遠の摩擦の相手、対立の相手」だと見ることを強調する。中国側は、日本が台湾を支持すること、尖閣諸島の領有権を巡り中国と対立していること、そして日本が日米同盟に基づいてアジアでの安保の役割や防衛力を着実に強めていることなどに反発するために、そうした潜在的な敵対姿勢が生まれるのだという。

 アンドリュー・ネーサン氏と言えば、米国の中国研究でもずしりとした重みを持つ存在である。同氏の名前を国際的に高めたのは、「天安門文書」の公表だった。天安門文書とは、1989年の天安門事件当時の、中国共産党最高部の議論の内容の記録である。2001年1月に米国大手外交雑誌によってまず暴露掲載された。

 89年6月の中国共産党による民主活動家たちの大弾圧と殺戮は、天安門事件としてその後の世界に広く知られた。中国独裁政権の苛酷な体質を露呈する弾圧事件だった。天安門文書はこの事件を起こした共産党首脳部の議論のやりとりを詳しく記録した重要秘密文書だったのだ。その秘密文書が中国から国外に流出し、米国で公表されたのである。

 その「公表」に米側で最大の役割を果たしたのがネーサン氏だった。だから中国共産党政権はネーサン氏を長く敵視するようになった。同氏への中国への入国ビザも一切、出さないようになった。まさにムチを受けたわけだ。