2月初旬、米国ペンシルベニア州フィラデルフィアに住む知人から1通のメールを受け取った。
そこにはフィラデルフィア市内の公立校が続々と閉鎖されている事実が語られていた。日本でも少子化の影響で、公立小中学校の併合や閉鎖はあるが、1校や2校という話ではないという。米国の大手メディアはほとんど報道しないので、日本から発信できないかという内容だった。
ニューヨークでは100校以上が閉鎖された
同市内だけで、今後数カ月に40校以上が閉鎖される予定だという。そうなると、知人の一人息子は慣れ親しんだ近所の小学校から、遠く離れた公立の小学校に通うか、ホームスクール(後述)を選ばざるを得ないらしい。
最初は個人的な不満が綴られているだけかと思ったが、学校閉鎖の波は同市だけの現象ではなかった。
調べると、ロサンゼルス市、ニューヨーク市、シカゴ市、アトランタ市、首都ワシントンDCなど全米に及んでいた。実は公立校の閉鎖問題は米国では10年以上前から起きており、少しずつ肥大化している。
例えばニューヨーク市では近年だけで100校以上が閉鎖されていた。閉鎖を決めるのは市の教育政策パネル(PEP)で、マイケル・ブルームバーグ市長が圧倒的な権限を行使している。13人からなる理事会のうち過半数の8人を自ら任命し、市内の教育関連の施政を事実上牛耳っていた。
同市長の教育方針は、全米中で見られる教育へのスタンスに共通するものがある。それは日本のゆとり教育からの反動と同じで、生徒の統一テスト結果を重視する方向に舵が切られていた。さらにビジネス型の学校経営が導入されたことにも原因がある。
端的に述べると、教育レベルの低い学校を閉鎖するという悪しき慣行がまかり通り始めるのだ。同時に、予算不足による経営学的な観点から学校を閉めざるを得ないという。
全米教育統計センター(NCES)の発表によると、2001年に全米で717校だった閉鎖数は、10年後の2011年には1069校に増えている。1年間で約1000校も閉鎖に追い込まれているのだ。知人はメールの最後に、「公立校の無分別な閉鎖は社会を潰す!」と書いた。
統一テストの成績が悪い学校が閉鎖されるという。本来であればそうした学校に通う生徒を立ち直らせるのが教育現場だと思うのだが、そうではないらしい。