急速に進化し始めた日本の住宅。前回は耐震性能を取り上げたが、今回は長足の進歩を遂げるスマートハウスについて専門家の話を聞いた。住宅をネットで外部に接続すると何が起きるか、非常に成長性のある楽しみな分野である。また日本の技術が大いに生かされる。

大和ハウス工業・吉田博之主任研究員

 しかし、ここで私たちは過去の失敗も肝に銘じなければならない。NECのパソコンとNTTドコモの「iモード」である。どちらも高い技術を持ち当初は我が世の春を謳歌しながら、結局、オープン化に対応できずにガラパゴス化して市場を失っていった。

 あとで詳しく述べるが、スマートハウスという新しい成長分野で日本が市場を取るためには、何よりもまず電力の送電網を電力会社から分離することが必要である。それなしには過去の失敗をなぞることになるだろう。

 アベノミクスによってようやく日本経済が活力を取り戻そうとしているいま、スマートハウスは日本経済の先行きを占う極めて大切な題材と言える。

 大和ハウス工業・総合技術研究所フロンティア技術研究室の地球温暖化防止研究グループICT研究チームの吉田博之主任研究員にスマートハウスの重要なポイントを聞いた。 

これまでとは状況も内容も違う、第3次スマートハウスブーム

川嶋 東日本大震災後のエネルギー問題をきっかけに、「スマートハウス」への関心が高まっていますね。

吉田 実はスマートハウスの考え方は最近出てきたものではありません。その発想は1980年代からあり、これまでに2度のブームがありました。

 最初の90年代のブームは、電話回線を使って外出先から家庭の設備機器をコントロールするホームオートメーションブームと言うべきものでした。東京大学の坂村(健)教授などが取り組んだ「トロン電脳住宅」が、日本におけるスマートハウスの原点と言えるでしょう。

 次に2000年代にブームが来ます。この時はインターネット冷蔵庫やインターネット電子レンジなど、家電がネットにつながっていろいろなサービスを提供する家が登場しました。電話回線に取って代わったインターネットでコントロールしようとするものです。

 ただ、過去2度のブームでは、まだ必然性が熟していなかったのか広く普及するところまではいきませんでした。