アメリカ東海岸のスリーマイル島原発を訪ねて取材した「スリーマイルからフクシマへの伝言」4回目である。スリーマイル島(TMI)原発から20キロのハリスバーグ市(ペンシルベニア州の州都)に住むスコット・ポーツラインさん(54)に話を聞いた。
事故後、原発の安全問題に興味を抱き、ボランティアとして調査・研究を続け、前回のメアリー・オズボーンさんと同じように、経験と知識を積んで州や連邦議会の公聴会で証言するまでになった。現在は原発の安全問題のコンサルタントとして活動している。原発監視団体「スリーマイルアイランド・アラート」(TMIA)には安全問題のコンサルタントとして参加し、調査結果を公表している。
今回も「Captured Regulator」(監督官庁が規制すべき業界に飲み込まれてしまう現象)「偽りの確率論」など、日本での事例に似た話が次々に出てくるので、驚きの連続だった。
住民の安全対策が後回しにされたのはお金がかかるから
──1979年のスリーマイル島原発事故の当時はどこで何をしていましたか。
ポーツライン氏(以下、敬称略) 「私は当時ミュージシャンでした。ファンクやディスコを演奏するバンドでベースを弾いていました。グリーンランドの米軍基地で演奏をしてテレビを見ていたら『スリーマイル島原発で事故が起きた』とニュースが流れた。慌てて故郷に戻りました」
──同じメルトダウン事故を起こしたスリーマイル島原発そばの住民として、福島第一原発事故をどうご覧になりましたか。
ポーツライン 「事故2日目からずっと動きを書いて記録していました。『津波があったが安全に停止した』というニュースを聞いて『それは嘘だろう』と思った。私はスリーマイル島事故を経験して教育されましたからね(笑)。自衛隊が非常用バッテリーを運んでいると聞いて、きっとメルトダウンになるだろうと思った。原発に電源がないならメルトダウンは避けられませんから」
──日本政府や東京電力はメルトダウンしているのに「していない」と言い続けました。
ポーツライン 「日本人はアメリカ人より政府を信頼すると聞きます。しかしフクシマでそれも変わったのではないですか? TMI事故で私が学んだのは『政府はウソをつく』『大企業はウソをつく』『政府を盲目的に信じてはいけない』ということです」