北朝鮮による12月12日の衛星打ち上げに世界の耳目が集まる一方で、中国の弾道ミサイル実験についてはメディアの関心は薄かったようだ。

 北朝鮮の発射に先行して11月30日、中国は新型の大陸間弾道ミサイル「東風31A」の発射実験を行った。中国山西省にある太原衛星発射センターから発射されたミサイルは、本来の射程を短縮し中国西部の目標地点に到達したとされる。

 このミサイル発射実験から1週間も経たない12月5日、習近平党総書記・中央軍事委主席は中国の戦略ミサイル部隊である第2砲兵部隊第8回党代表大会の代表と会見を行い、「国防・軍建設のテーマ・主要路線を堅持し、部隊の全面的な建設と軍事闘争の準備を強化し、強大で情報化された戦略ミサイル部隊の建設に努めなければならない」と強調し、「第2砲兵部隊はわが国の戦略的抑止の核心的な力であり、わが国の大国としての地位への戦略的な支えであり、国の安全を擁護する重要な礎石である」との認識を示した。

 11月30日のミサイル発射実験は、その意味で言えば習近平政権の幕開けを祝う「祝砲」であり、習近平は第2砲兵部隊の重要性を語ることで軍の期待に応えたことになる。

 しかし、このミサイル発射実験をスクープした米国の著名な軍事専門記者であるビル・ガーツによれば、発射当日は四川省成都で行われていた米中災害救助合同演習の最終日に当たっている。そのことから、今回の発射実験は米国に対して中国の軍事的強硬路線を認識させる意図があったものと推測している。

 その当否とは別に、この時期は日米が北朝鮮のミサイル発射実験に照準を合わせ、軌道を外れたミサイルが沖縄など日本領土に落下する事態に備え、迎撃破壊態勢を取っていたわけであり、中国の弾道ミサイル試射はこれをあざ笑うかのような行動であった。

中国はなぜ「東風41」を開発したのか

 2012年、中国が行った長距離弾道ミサイルの発射実験は、11月30日の「東風31A」発射で4回目となる。ただし、2012年1月、中国で潜水艦発射弾道ミサイル「巨浪2」の発射実験があったと台湾のメディアが報じていることをカウントすれば、5回となる。

 「東風31A」の発射実験は8月30日以来2度目であった。2012年の他の2回とは、7月24日に行われた「東風41」と8月14日の「巨浪2」の水中発射である。