週に1度使うか使わないかの自家用車。ホコリをかぶった愛車を見て「もったいないな」「非経済的だな」と思ったことはないか。
家具が壊れたが、修理用の工具ひとつあれば修理できるような程度だ。だが、やや特殊な工具が必要なので、持っている友人は思い当たらない。かといって、1度だけの修理のために買うには高額すぎる。「誰でもいいから貸してくれ」。冗談半分で考えたことはないか。
最近米国では、自家用車は使っていない時に他人に貸し出して小遣い稼ぎができる。工具は、最も近くに住んでいて、無料で貸してくれる人を紹介してくれるサービスがある。
車や工具だけでなく、生活に関するものなら全て、果ては自分自身までをも借りたり貸し出したりできる社会。米国はその方向に舵を切っている。これを「シェア経済(Share Economy)」という。
レンタルが恥ずかしいことではなくなった
「なるべく所有をしないでレンタルする。所有している物は、他の人と共有する」
これが、シェア経済の基本的な概念だ。
米国のレンタル業は、インターネットを使うことで飛躍的に種類が増え、効率的になった。パーティー用の服、高級ジュエリーや腕時計、ブランド物のバッグなどはもちろんのこと、自宅に飾る絵画や子供のおもちゃまで、何でもござれである。葬式用の棺のレンタルまである。
使用頻度に対して価格が高いと感じる物は、買わずに借りる。ネットで注文して、宅配便で送ってもらう。使い終わったら送り返す。例えば、15万円ほどのルイ・ヴィトンのバッグは、1週間1万円ほどで借りられる。レンタルは割高だが、必要なときだけ、そのときの気分で自由に選べる方が理にかなっていると感じる傾向にあるのだ。
米国のレンタルの歴史は長い。しかし、最近までレンタルは恥ずかしいことだという風潮があった。大量消費が文化だった米国では、レンタルはアメリカンドリームの対局にあり、落ち目の象徴的な行為とされていた。
それが突然変わったのには、2つの理由がある。1つは昨今の不景気。2つ目は、ジップカー(Zipcar)に代表される、カーシェアリングサービスの登場だった。
市内の様々な場所に停めてあるカーシェアリング用の車を、ネットを介して、自在に乗り回すことができる。従来のレンタカーよりも利便性がずっと高く、アクセスも簡単だ。ビジネスとして急成長を遂げている。
米国人にとって、車とは生活の核であり必需品だった。その車を手放したことが、「所有」することの重荷から解放されるきっかけになったと言われている。自家用車を持たないでレンタルできるなら、何でも借りられるじゃないか、と意識が変わったのだ。