米国の首都ワシントンでも、北朝鮮のミサイル発射が切迫した事態として真剣に論じられるようになった。

 北朝鮮当局は実際の発射が12月10日から22日の間に起きると言明した。だから秒読みの段階である。もっとも最終的な準備が停止され、発射は延期になるとの報道も流れた。だが、北朝鮮政府がこの弾道ミサイルの発射実験を断行しようと意図し、準備をしている事実は揺らがない。

 周知のように北朝鮮はこのミサイルを「人工衛星」だと称している。宇宙の平和利用だとして、打ち上げのロケット自体には「銀河3号」という名をつけ、搭載する衛星は「光明星3号」とすでに命名した。しかし打ち上げの実態が軍事目的の長距離弾道ミサイルの実験であることは多方面から証されている。

 北朝鮮は弾道ミサイル技術の実験を国連決議によってすでに禁じられている。だから米国政府も当然、今回の実験予告に対し、正面から反対を表明した。

 クリントン国務長官は懸念を述べて、反対の声明を出し、日本など関係諸国に北朝鮮への圧力を増すように要請した。ワシントンでもオバマ政権内外で、今回の北朝鮮のミサイル発射計画が憂慮すべき事態として広範に語られるようになった。

 しかし北朝鮮は、なぜこの時点で国際社会の反対を無視して、あえて長距離弾道ミサイルの実験発射へと踏み切ろうとするのか。朝鮮半島の至近距離にある日本にとっても、この点でのワシントンの見解を知っておくことは不可欠だろう。

北朝鮮がミサイル実験を断行する理由

 結論を先に述べれば、米国から見て北朝鮮の究極の目的は、米国本土にまで届く長距離弾道ミサイルを開発し、さらにそのミサイルに小型の核弾頭を装備することだと言える。そうなれば北朝鮮の国威は一気に飛躍して、米国にも、韓国にも、そして日本にも、北朝鮮が投射するパワーは一大脅威となる。こうした北朝鮮の狙いは当コラムでもすでに報じてきた。

 北朝鮮は、米国本土に確実に届くミサイルも、ミサイルに装備できる小型で軽量の核弾頭も、まだ完全には開発できていない。だが万が一にも開発し、実戦配備ができたとき、いわゆる「北朝鮮の核問題」は一変する。重大な核の脅威が米国にとっても国際社会にとっても現実となるのだ。北朝鮮が公然たる核兵器保有国となるのである。だから米国の歴代政権の最大の目的は、北朝鮮による核弾頭装備の長距離ミサイル開発を阻止することとなってきた。

 しかし、なぜいま北朝鮮がミサイル実験を断行するのか。