「時間にルーズだし、約束は守らない。だから納期に影響する。武士に二言はないという日本人とは真逆を行くのがバングラデシュ人」
「確かに仕事の納期はいい加減だけれど、話せば親日で、決して怖い存在ではない。おしゃべり好きな、人なつこい国民性だ」
バングラデシュ人への見方は様々だ。筆者は訪れる先々で、現地の日本人がバングラデシュ人をどう受け止めているのか、彼らとどう関わっていこうとしているのかを聞いて歩いた。
ある日本の零細企業はまさに“紛争中”だった。「条件を呑まないなら、みんなで辞める」と経営者に詰め寄るバングラデシュ人の従業員。「やれるものならやってごらん」と日本人経営者。
「やればやりっぱなし、責任は取らない、教育の貧困さに起因する常識の欠如なのか、注意すれば逆ギレ・・・」とため息をつく。去る者は追わないのが、この日本人経営者のやり方だが、案の定、想像通りの展開となった。バングラデシュ人従業員は啖呵を切ったものの行き場がないと見えて、しばらくすると現場は正常稼働に戻った。
日本とバングラデシュのビジネスのパイプ役として活躍しているニュー・ビジョン・ソリューションズの会長モンタ・ブイヤンさんはこう語る。「バングラデシュ人はもともとイージーゴーイング。もっとハードに働けと要求されたら、拒絶してしまいます」
世界にも稀な勤勉民族の日本人からすれば、バングラデシュ人の働きぶりは当然「不合格」になってしまう。日本人の要求レベルは高い。中国でも、東南アジアでも、「なぜ、君たちはダメなんだ」と絶望するのは、むしろ仕方のないことでもある。
他方、バングラデシュの首都ダッカには、スーパーエリートたちも存在する。彼らは多国籍企業に雇用され、活躍中だ。だが、そこでも事情は同じようなもの。内部からはこんな声が漏れ聞こえてくる。
「職業意識が高いとは決して思えない。仕事を完全なものにしようという気持ちが伝わってこない」
“メール1本”では商売は成立しない
さて、日本企業の駐在員は、そんなバングラデシュ人たちとどのように仕事をしているのか。筆者は、ダッカで工業用ミシンを販売するブラザー工業駐在員の伊藤芳美さんを訪問した。