いま、世界で最も活気のある国の1つがロシアと言われている。

 広大な国土を活かした穀物生産、石油、天然ガスなど豊富な資源の恩恵のおかげか、モスクワやサンクトペテルブルクの大通りでは、ブランド店や高級レストランがひしめき、欧州の豪華な車が鈴なりに連なり、寒い気候も何のその・・・。美女はミニスカートで跋扈していた。

世界一長い鉄道でモスクワまで

シベリア鉄道の終着駅ウラジオストク駅

 東の端のウラジオストクは、急ピッチで開発中。APEC(アジア太平洋経済協力)開催に合わせて真新しい空港、高速道路、吊り橋が造られ、丘にはタワーマンションが雨後の筍のように建設中。日本人観光客にはビザの免除が計画され、ロシアの東の門戸は大きく開かれようとしている。

 ウラジオストク発モスクワ行きのチェコスロバキア製機関車чc7型は1日おきに運行。その最も安い寝台のツーリストクラスの車両は庶民が頻繁に使うクラスで予約が取りにくい。そのため繁忙期には荷物棚もベッドとなるほどの盛況さである。

 私は渡航の3カ月前に廉価なツーリストクラスを予約。10月下旬、ウラジオストクからモスクワに向かうことにした。シベリア鉄道全線を通して走るのはロシア号。40年以上にわたり極東の港街と首都を結んでいて、全長9297キロメートルという距離は世界一長く、日数にして6泊7日かかる。

いまにも舞踏会が行われそうな豪華な駅舎

 東端の終点駅であるウラジオストク駅は天然の良港、金角湾に面し、1893年に開業した。駅舎は古代ロシアの宮殿をイメージして造られ、天井は巨大な絵画に覆われシャンデリアが吊るされている。床と壁はベージュの大理石張りで、貴族の舞踏会がいまにも開かれそうな絢爛豪華さを誇っている。

 シベリア鉄道の改札は出発時刻の30分前から行われる。切符を提示して車内に入ると気温が35度という暑さだった。自分の席を確認し、周囲の席の人に挨拶をするが、なぜかほとんど無反応・・・。一般的にロシア人、特に中年以降の男性はラテンアメリカの男と違って初対面の人間には無愛想と言われる。これはロシア人同士にも言えるようだ。