前回の「インドネシア経済を支えるパームオイルの光と陰」では、パームオイルとそれが引き起こす環境問題を取り上げたが、今回は環境問題のなかでも廃水問題を解決するビジネスについてお伝えしたい。
高濃度の汚水が環境問題を引き起こすパームオイル搾油所
パームオイルの搾油所はインドネシアとマレーシア両国で約1000カ所あると言われ、そこから毎年1億トンの廃水(Palm Oil Mill Effluentの頭文字をとりPOMEと呼ばれる)が出ていると推計されている。
インドネシアとマレーシアでのPOMEがどの程度汚染されているかというと、COD(化学的酸素要求量)の量が1リットルあたり5万ミリグラム、BOD(生物化学的酸素要求量)が1リットルあたり2万5000ミリグラムという平均値がある。
これを日本の環境省の一律廃水基準に当てはめると、日本ではCOD、BODともに1リットルあたり160ミリグラム以下と定められているので、POMEのCOD、BODは日本の基準のそれぞれ300倍、150倍という桁違いの汚水ということがお分かりいただけるだろう。
前回の記事でふれたように、POMEはいったん巨大な池に溜め込まれ、微生物の分解によりメタンガスを発生させながらCODとBODを100ミリグラム程度に下げて河川に排出される仕組みになっている。ただ、実際には雨が降れば周辺にあふれ出すので、基準が守られているとは言えなかった。
今、これまで放置されてきたPOMEによる環境破壊の問題は、改善される方向に向かいつつある。
きっかけの1つとして、新たにパームプランテーション事業に参入してきた南アフリカなどの国々が、廃水基準を遵守するようになったことが挙げられる。企業イメージを気にする欧米の日用品、食品メーカーが、環境破壊を放置しているパームオイル会社の商品を買わなくなることを懸念するようになったためだ。
一方、国としても各社の自主性にまかせず、規制を強化する必要がある。マレーシアはそれほどではないが、インドネシアはトレーサビリティが難しいと言われている。
トレーサビリティとは、購入したパームオイルがどこのプランテーションで生産され、どこでどのオイルと混ざり、どのルートをたどってここに至ったのかを追跡できるかどうかである。
これが困難ということは、環境にやさしいパームオイルと環境破壊をしたパームオイルが知らないうちに混ざっている可能性があることを意味する。全体を良くしないと、ブランドイメージの悪化はまぬがれない。