水の力は偉大だ。岩を砕き、谷を穿ち、地球の姿を変える。

 「信念岩をも穿つ」と言うが、水がこんな力を持っているということは、実際に切断している現場を見ない限り信じられないだろう。水が、まるでナイフのように紙を切っていく。厚い鉄板も切ってゆく。大理石にも穴が開く。

 それを成し遂げるのがウォータージェットマシンだ。細いノズルから高圧の水を噴射して、その圧力であらゆるものを切る。

 今、最も期待されているのが福島第一原子力発電所のがれき処理だ。

 ウォータージェットマシンが有利なのは、切る対象物を選ばないことだ。

 がれきには何が混じっているか分からない。ウォータージェットであれば、対象物が鉄でも、コンクリートでも、大理石でも、FRPでも、ゴムでも、カーボンファイバーでも何でもOK。引火性のガスや可燃性の素材が存在する場合もあるが、ウォータージェットなら火災を発生させる可能性は極めて小さい。

 しかも、がれき処理の現場は放射線量が高く、直接人間が作業するわけにいかないので、空中につるして遠隔操作する・・・というようなことになるが、そんな時に、ウォータージェットであれば、機械側の足場があまりしっかりしていなくても(むろん、しっかりしていた方がいいが)、何とか機能を発揮できる。さらに相手がどのような素材でも、あるいは相手材料が変わっても、刃物を取りかえたり、治具を付け替えたりする必要がない。

 当然、大型の剪断・解体機(大型のカニのはさみのようなもので、がれきを挟んで、砕き、鉄骨も切断する機械)も、活躍するだろうが、剪断・解体機が使えない条件下でも、ウォータージェットなら力を発揮できる。

 このウォータージェットマシンのオンリーワン企業が、富山県魚津市にあるスギノマシンだ。

水圧を利用したパイプクリーナーで創業

 スギノマシンの創業は1936(昭和11)年。現社長、杉野太加良さんの父、杉野林平さんが紡績用ボイラーの中のパイプをクリーニングするチューブクリーナーを発明し、大阪に杉野クリーナー製作所を創立したのが始まりだ。