日本のITサービス・コンサルティング市場は、どのくらいあるのだろうか? 経済産業省の調査によれば、市場規模は約14兆5000億円(2007年)という数字になる。現在、IT業界には約32万人の技術者がいるので、1人当たりの平均売上額は4500万円となる。

 しかし、この数字を鵜呑みにしてはならない。なぜならば、この業界は2次請けや3~4次請けが日常化しているからである。1つの案件を複数の会社が多重売り上げしているので、実態はつかめない。

 10年前は、1人当たりの売り上げが1000万円以上あれば「優良会社」と言われていたが、現在は800万円もあれば立派な数字である。800万円だとしても経済産業省の4500万円とは5倍以上の開きがある。そうなると、3兆円ぐらいが本当の市場規模なのかもしれない。

大手IT企業の「えげつない」手口とは

 以前、大手のシステム開発会社が「ゼネコン化」している現実をお話ししたが、どうも最近、この大手がどんどん傍若無人になっている気がして仕方がない。特になりふり構わない売上高至上主義が目につき、閉口してしまう。

 リーマン・ショック以降、ユーザー企業はIT投資について慎重になっている。しかし、上場している老舗のシステム開発会社にとって、予算の達成は至上命題。ユーザー企業が財布のひもを締める中で、なんとかして売り上げを拡大しようと躍起になっている。

 その手口の1つが二重・多重派遣である。大手システム開発会社のX社が労働基準監督署の査察で二重・多重派遣を指摘され、今や業務縮小を余儀なくされていることは、IT業界では周知の事実である。

 また、次のような話もある。

 外食産業のM社(上場企業)は業務改善の一環として、システム管理業務などの一部をアウトソーシングしている。中堅システム開発会社Y社が、数名の社員をM社に派遣していた。Y社は労働者派遣事業の許可をきちんと受けている。

 そこに、大手IT老舗会社のZ社が参入してきた。Z社は元々手がけていたコンサルティングやシステム開発だけではなく、最近はシステムの運用保守、オペレーション、業務代行にまで領域を広げてきている。