ソーシャルメディアの中でもフェイスブックの悲観的な将来が各方面で論じられている。筆者は「フェイスブックが消滅する日」(月刊文藝春秋)という記事で、「巨人」の衰退論を展開した。もちろん仮説だが、それを裏づけるいくつもの徴候はすでに表出していた。
1年前から熱が冷めていた米国
その1つは、米国内に限ってのことだが昨年の夏頃から、「フェイスブックのピークは過ぎた」という言説が出回っていた。
今年1月から4月までの1カ月平均の利用者数は、昨年下半期の平均と比較してすでに減少し、「熱が冷めた」との意見もある。
そして米国で取材を続けると、フェイスブックに対する悲観論を口にする人は1人や2人ではなかった。
「パーティーは終わった」という表現を使う人もいる。米国以外の各国では依然として利用者数は増え続けているが、本家ではすでに「飽きた」という声が多数聞かれた。
2つめは投資銀行アイアンファイア・キャピタルの創業者エリック・ジャクソン氏の消滅論だった。
あと5~8年で消滅する
「フェイスブックは今後5年から8年で完全に消滅すると思う。それはIT業界の流転の速さによるもので、フェイスブックは完全に飲み込まれる」
IT業界に通じた氏は、業界の将来を見据えるだけでなく、売り上げの8割を広告に頼るインターネットサービス企業という特質に弱点があるとみる。
「フェイスブックはアップルのようなハードウエア企業ではありません。さらに次世代はモバイルが主流になる運命にあります。モバイル専用のプラットフォームによって一般のパソコンでは動かないアプリが業界を席巻してきます。フェイスブックがモバイル専用の広告掲載を始めたのは今年6月からで、すでに出遅れています」
フェイスブックやリンクトインといったソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)は次世代のモバイル中心の波に飲まれると予測するのだ。
3つめは今年5月、ワシントン・ポスト紙に出た風刺画だった。図柄では、モバイルを手にした若者たちが画面を見ながら一列に歩いている。前方は崖で、若者たちは画面に夢中になっていて気がつかない。そのため1人ずつ崖から落下していく。