米国大統領選挙に向けての共和党全国大会では、多数の演説の中で「日本」という言葉がただの一度も聞かれず、米国にとっての日本の比重の減少を改めて印象づけた――。

 米国の大統領選挙はいよいよ本番を迎えた。共和党側の正副大統領候補を決める党全国大会は8月27日から30日までの4日間、フロリダ州のタンパ市で開かれた。大統領候補にミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事、副大統領候補にはポール・ライアン下院議員がそれぞれ指名された。

 民主党も9月3日からノースカロライナ州のシャーロッツビルで全国大会を開き、現職のバラク・オバマ大統領とジョセフ・バイデン副大統領をそれぞれ候補に指名することが確定している。9月6日夜にはその民主党側の指名が受諾される。その結果、両党の正副大統領候補が最終的に決まり、11月6日の投票日に向けての本番の選挙戦が始まることになる。

党大会の演説は米国の関心事のバロメーター

 さて私自身はワシントンからタンパに出かけ、まず共和党全国大会の取材にあたった。運悪くハリケーンが現地に接近して、雨や風が激しくなり、1日目の8月27日は開会こそ宣言されたものの、ほとんどの行事がキャンセルされた。このため正味は28日から3日間の行事日程となった。

 私のアメリカ大統領選挙取材も1970年代後半からだから、ずいぶんと回を重ねることになった。全国党大会の取材は1980年が最初だった。以来、中間にブランクがいろいろあったとはいえ、30年を超える体験となる。

 その体験を踏まえて、今度の共和党全国大会を見ると、わが「JAPAN」の名がよくも悪くも、ただの一度も出てこないというのが大きな特徴だった。これまでの党大会では、日本は批判されるにせよ、賞賛されるにせよ、なんらかの形でその国名が一度ぐらいは出るのが普通だった。だから言及ゼロというのは、やはり、いまの米側の日本への認識の低さを映し出しているように感じられたのだった。

 米国の選挙の1つのプロセスにすぎない党大会で特定の国の名前が出るか出ないかで、米側のその国に対する認識や政策を推し量ることは短絡的かつ軽率すぎるかもしれない。

 だが、次の大統領候補を決めるこの種の党大会では、その党の全米各地からのメンバー多数が連夜、総出で内政から外交まで国の状況を語り尽くすのである。そこで述べられる山のような言葉の数々は、米国の時の関心事についてのなんらかのバロメーターとなることもまた否定はできない。