「学歴社会」という言葉、私は正直大嫌いなのですが、日本社会の現実として「学歴」がモノを言う場合があるのは否めません。

 その最たるものの1つが就職あるいは雇用だと思います。このテーマで少し考えてみたいことがあるのです。

事実上の指定校制度

 例えば大手電気メーカーなどは、一流とされる大学、それも特定の研究室と深い関わりがあり、OBを毎年絶やすことなく採用しているケースがあります。

 社会的にどれくらい知られる言葉か分かりませんが、内々では「事実上の指定校制度」などとも言われることがあるものです。

 「X大に入ると就職がいい」「○○先生の研究室に所属するとA社に就職しやすい」といったことは否みがたい現実で、企業側もそれ前提に○○先生と「良いご縁」を持っている場合が少なくありません。

 もう10年以上前のことですが、東京大学に助教授として着任した直後、ある企業の採用担当者の方から、その会社のケースですが、採用についてこんな本音を聞いたことがあります。

 「いや、そんな、毎年ものすごい優秀な人材が来てくれなくてもいいんです。ただ、そこそこ能力のある人が揃っているから。時々は大はずれもありますけどね・・・(笑)。でも、先輩後輩の関係もあるし、途切れずに東大から人が入ってくることが大事っていう面もあるんですよね」

 就職活動なるものを一度もせずに20代を過ごした音楽屋の私には、このあたりのことがピンとこず、いろいろ愚問を発してしまいました。

 「・・・どうして途切れずに、というのが大事なんですか?」

 「まず、同級生や友達がいるじゃないですか。昔からの知り合い。東大OBは社会のいろいろなところで大事なポジションに就くことが分かっているので、毎年OBを採用していると、必ずVIPと『同期』の我が社のスタッフがいることになるわけです」