ゴラン高原派遣自衛隊は、イスラエルとシリアの停戦状況および兵力引き離しに関する合意の履行を監視するUNDOF(国連兵力引き離し監視隊)の輸送業務を中心とする後方支援を担当している。
その隊員たちにイスラエルを案内して和みと英気を与え、また同国を訪れる日本人ツアー客にゴランで大任を果たす自衛隊について語り、自衛隊の重要性・必要性を説いている日本人ガイドがいる。
イスラエルという国
旧約、新約聖書にまつわる4000年の歴史を有し、ユダヤ教、キリスト教およびイスラム教の聖地が共存する国である。紀元70年にユダヤ民族国家がローマ帝国によって滅ぼされると、ユダヤ人は世界中に離散していった。
1947年11月、国連がパレスチナ分割案を認め、翌48年5月14日英国軍がパレスチナを撤退すると、ユダヤ国民評議会がテルアビブで独立を宣言する。エルサレム神殿があったパレスチナの地に、約2000年ぶりに悲願の建国をしたのである。
しかし、ユダヤ人が60万人であったのに対し、建国を認めない周辺のアラブ人は4000万人で、その日にアラブ連盟5カ国(レバノン、シリア、ヨルダン、イラクおよびエジプト)が宣戦を布告、翌15日に侵攻して第1次中東戦争が勃発する (後にサウジアラビア、イエメン、モロッコも部隊を派遣)。
1年2カ月にわたる戦争に勝利して、イスラエルは何とか独立を維持することができた。
以後も第2次(1956年)、第3次(1967年)、第4次(1973年)と戦争を繰り返す。秋田・山形2県の大きさで、現在800万人の人口を擁するイスラエルは、技術力と先制攻撃も厭わない戦略で国家の安全を保持している。
「嘆きの壁」や「岩のドーム」と称される聖所がある東エルサレムはユダヤ教徒地区、イスラム教徒地区、キリスト教徒地区、アルメニア人地区に分割されており、PLO(パレスチナ解放機構)はここを首都に定めている。
この東エルサレムを含むエルサレムは言うまでもなくイスラエルの首都でもある。
イスラエル国内には虫食いのように、軍および警察権、並びに民政を含む行政権すべてをPLOが管轄する地域(A地域)や、軍と警察権はイスラエルが保有するが、民政を含む行政権はPLOが保有する共同管轄地域(B地域)が散在する。