「郵政改革法案の今国会での成立を皆さまにお約束します」──。民主党・小沢一郎幹事長の言葉に会場からは怒涛のような拍手が起こった。

 全国2万人の郵便局長で組織する全国郵便局長会(略称・全特)は、2010年5月23日、大相撲・名古屋場所でお馴染みの愛知県体育館(名古屋市)で、政権交代後、初めてとなる通常総会を開いた。

 全特は、かつて「自民党の集票マシーン」と言われたが、小泉純一郎元首相が郵政民営化を掲げて戦った2005年9月の衆院選を契機に自民党とは袂を分かった。現在、全特が支持するのは国民新党であり、連立与党を組む民主党からも多くの国会議員が総会の来賓として招かれた。

 奇しくも同じ5月23日、鳩山由紀夫首相は米軍普天間基地の移設問題に2度目の沖縄訪問を果たし、県内移設反対派から厳しいシュプレヒコールを浴びていた。このところ、報道機関が実施する世論調査では鳩山政権の支持率は20%台に低迷しているが、愛知県体育館の中だけは、民主党への熱い期待で燃え盛っていた。

スター気分を満喫

プラカードの女性の先導でスポットライトを浴びて入場ちょっとしたスター気分?

 全特総会には、小沢幹事長以下、亀井静香郵政改革・金融担当相(国民新党代表)、自見庄三郎国民新党幹事長、森田高国民新党政調会長、又市征治社民党副党首、鈴木宗男新党大地代表、近藤昭一衆院総務委員長(民主)、佐藤泰介参院総務委員長(民主)、中井洽法務相(民主)、長谷川憲正総務政務官(国民新党)の計10人の国会議員が出席。さらに、公務のために駆け付けることができなかった原口一博総務相(民主)はビデオ中継で参加した。

 業界団体の総会やパーティーに政治家が招かれることは、決して珍しいことではない。招かれた政治家は、大切なゲストとして丁重に扱われ、「祝辞」と称して選挙への協力を求めるスピーチタイムを与えられるのが常である。

 しかし、全特総会に招かれた政治家の厚遇ぶりは尋常ではない。照明を落とした会場で、スポットライトを浴びて、1人ずつプラカードの先導で万雷の拍手の中、ひな壇へと歩を進めるのだ。

  次のゲストとは十分に間隔が取ってあるので、束の間、体育館に集まった7000人の視線と拍手を一人占めにしてスター気分を満喫できる。しかも、党首・幹事長クラスに限らず、1年生議員までもが同じように一流政治家扱い。

 朝9時からスタートした総会は、午前中の大半を国会議員からの祝辞に充てる。「来賓を代表して小沢幹事長と亀井代表から祝辞を頂きます」などというケチなことは言わず、1年生議員まで全員、壇上で挨拶する時間が与えられる。折しも、7月11日の参院選を前に、センセイ方の言葉にもおのずと力が入り、型どおりの挨拶で終わるはずもない。1人1人の挨拶が5分、10分と続く。あまりの熱い演説に、郵便局長会の総会であることを忘れ、参院選に向けた総決起集会を取材に来たかのような錯覚に陥る。