すぐに観たいDVDがあるがレンタルビデオ店に行く時間がない――。
こんな時はどうされるだろうか。ネット通販で購入することはできるが、その日に入手はほぼ無理である。いま書いている報告書や企画書の資料として使いたいので、なんとか今日中に入手する手立てはないか。
それを可能にした企業がかつて米国にあった。
どんな商品でも1時間以内にお届けします
「コズモ・ドットコム」や「アーバン・フェッチ」といった新進IT企業は、ニューヨークやサンフランシスコといった都市部限定で、ビデオやCDだけでなくピザやアイスクリーム、また特定スーパーでの食材購入まで幅広く注文を受け、1時間以内で宅配するサービスを提供していた。
だが顧客1人に費やす労力とコストが大きく倒産。「何でも屋」的な宅配サービスはアイデアとしては優れていたし、日本と比較して一般的にサービスの質が低い米国の宅配ビジネスに新風を呼び込んだ点で斬新だったが、商売として成立しなかった。
過去も現在も、日本の宅配サービスの質は米国を凌駕している。企業の管理体制の下で、日本の宅配便は信頼性、確実性、反応性、どれを取っても秀逸である。再配達も2時間枠の指定が当たり前だ。
一方、米国の宅配便はすでに各方面で語られている通り、日本の質とでは比較にならない。筆者が米国に住んでいた時、日本から届いた荷物の再配達を待っていたことがある。
「午後、お届けに行きます」
「午後といっても何時頃になるでしょうか」
「ですから午後です」
時間を指定できないことがほとんどのため、正午からずっと自宅待機を余儀なくされる。そして午後5時を過ぎた頃にやっと現れた。そんな経験は1度や2度ではない。それが米国流なのだろうが、あまりにも拙劣である。