1911年のイタリア・トルコ戦争において、史上初めての軍用機が戦場に投入された。以降、すべての軍事作戦は航空優勢が戦勝の必須要件となった。航空優勢とは「時間的及び空間的に航空戦力比が敵より優勢で、敵により大なる妨害を受けることなく諸作戦を実施できる状態」である。
航空優勢を失い惨めな敗戦を余儀なくされた日本
大東亜戦争において、航空優勢なき帝国陸軍は奮戦敢闘虚しく敗れ、ミッドウエー海戦敗北以降、海洋の航空優勢を失った帝国海軍は残された大艦巨砲では為す術なく、我が国は惨めな敗戦を余儀なくされた。
近現代の戦争を分析した空軍戦略家ジョン・ワーデンは次のように述べる。
「いかなる国家も敵の航空優勢の前に勝利したためしはなく、空を支配する敵に対する攻撃が成功したこともない。また航空優勢を持つ敵に対し、防御が持ちこたえたこともなかった。反対に航空優勢を維持している限り、敗北した国家はない」
西太平洋での海洋覇権を目指す中国は、海洋の航空優勢、つまり海洋制空権なくして制海権なしとの認識から、巨額の予算を投じて航空母艦を保有しようと躍起になっている。
専守防衛という世界的にも稀有な国是を持つ我が国にとって、特にシーレーンを含む周辺空域の航空優勢なくして国家防衛は成り立たない。その中核は航空戦力である。
量では凌駕できない航空機の質
航空戦力には2つのクリティカルな特徴がある。1つは「質は量で凌駕できない」という航空戦力の質の重要性だ。ゼロ戦が100機束になってもF15の1機に対応できない。
性能の劣る航空戦力をいくら保有しても、性能に勝る航空戦力には太刀打ちできない。高性能を追求すると、結果として経費は高騰する。質を追求する航空戦力の宿命である。
もう1つは、航空戦力の造成には10年単位の長期間を要することである。現在使用中のF15戦闘機は、機種選定作業から最初の飛行隊が実戦配備に就くまで約10年の歳月を要している。空中警戒管制機AWACSについては、整備構想を策定してから保有するまで約10年かかっている。
昨年末、航空自衛隊の次期戦闘機はF35に決定した。これも戦闘機取得、操縦者や整備員の練成など、実戦配備には約10年はかかるだろう。