MRIC by 医療ガバナンス学会 発行

 医療法に基づく医療計画制度は、法律上、医療提供体制の確保のために都道府県が定める計画とされているが、財政的な裏付けがなく、医療提供体制整備のための有効な手段を持たない。このため、基準病床数を上限とした参入規制としてしか機能してこなかった。

病床規制

 医療計画では、基準病床数が二次医療圏ごとに決められている。一般病床と療養病床については、両者を合わせた形で、基準病床数が提示される。一般病床には独自の計算式があるが、療養病床だけのための独自の計算式はない。

 医療計画には、療養病床数と入所介護定員との和を算出する計算式が提示されており、これから入所介護定員を減じた数が、療養病床数になる。療養病床数は、入所介護定員が大きくなれば、小さくなり、入所介護定員が小さくなれば、大きくなる。

 療養病床について、医療計画制度の内部の独立した変数として議論するのは適切でない。以下の議論は、一般病床を念頭においたものと理解されたい。

二次医療圏

 二次医療圏は、医療法では「病院の病床及び診療所の病床の整備を図るべき地域単位として区分できる地域」と規定されているだけであり、性格付けは、行政の判断に任されてきた。

 行政は、医療水準の向上より、統制を正当化しやすい行政単位や住民の生活圏に基づく論理を優先した。このため、二次医療圏が小さめに設定された。

 一方で、医療の進歩によって、病院には、多数の高価な医療機器が必要になった。医師の専門分化が進み、専門医の診療範囲が狭まった。病院の安全対策に、多様な専門家チームを必要とするようになった。

 結果として、世界的に、先端医療を担う基幹病院の診療規模は巨大化した。

 二次医療圏の多くは、本格的な基幹病院を維持するには、相対的に小さすぎるようになった。日本の基幹病院の診療規模は、二次医療圏の枠に縛られたため、世界的に見て小さい。病院ごとの疾患別手術件数が少ないのも、二次医療圏のサイズが影響している。

 近年、交通手段、通信手段、そしてなにより情報技術の進歩によって、良質な医療を求めて、患者が簡単に移動するようになった。