MRIC by 医療ガバナンス学会 発行
2012年3月30日の厚労省による病床規制継続宣言、千葉県による大量の病床配分と時を同じくして、千葉県最大の基幹病院である国保旭中央病院が、医師不足のため、救急受け入れ制限に追い込まれた。本稿では、病床規制と大量の病床配分が千葉県の医療に与える影響を考える。
千葉県の病床配分
千葉県では、埼玉県、神奈川県と共に全国屈指のスピードで高齢化が進行しつつある。これに伴い、医療・介護需要が増加している。こうした中で、2012年3月30日、千葉県は、千葉県保健医療計画に基づく病床配分を発表した。
配分可能病床数3725床に対し、66施設から、5762床の増床計画書が提出され、51施設に3122床が配分された。許可病床を求めて一斉に群がった感がある。
群がるのは、医療機関が、自らの意思だけで増床できないこと、許可病床が、たとえ実際に使われていなくても既得権益として保持されてきたことによる。
破綻した銚子市立総合病院の許可病床数393床も返上されていない。旧銚子市立総合病院を引き継いだ銚子市立病院は、2012年4月5日現在、最大53床で入院診療を行っている。
千葉県は、許可病床のうち、実際に使われている病床数を公表していない。ある病院の幹部は、医師・看護師不足のため、一般病床については、許可病床の70%程度しか使われていないのではないかと推定している。
既得権益化を悪として、増床が遅れたことを理由に、病床配分を取り消すのは難しい。病床の配分を受けると、病棟の建設、看護師募集が始められる。
しかし、看護師をどれだけ集められるか分からない。集められた分の病床を開くことになる。実際の増床は、病棟建設から相当遅れることになる。
遅れた分、金利負担が増える。増床が遅れたことを理由に、許可病床の配分が取り消されると、建設費を回収できず、破産しかねない。そもそも、取り消される可能性があるとすれば、融資を受けられない。
病床規制がなければ、無理な増床計画は生じない。建物を建てても医師や看護師を集められなければ、赤字が膨らむだけだからである。