南国新聞 2012年7月12日

 Gerai OA(ゲライOA)は固定した店舗を持たず各地のイベントや催し物などにストールを出店して、半島マレーシアの先住民オラン・アスリやボルネオ島のサバ、サラワク両州の様々な先住民の伝統手工芸品を販売することで、これら先住民の支援を行なっているボランティアグループだ。

工芸品

 あくまでも自分はコンサルティングとコーディネートを行っているだけと強調するのは、活動の創業者のレイタ・ファイダ・ラヒムさん。

 取材の際も自分の写真ではなく先住民たちの写真を掲載して欲しいと強く要請するレイタさんは過去20年以上にわたってマレーシア民族文化の研究者として活動し、国外の研究者の実地調査のコーディネーターとしても活躍している人。

 その縁でマレーシアの急速な経済発展から取り残された各地の先住民の苦境に触れ、自然に支援活動を行うようになった。

 「一般的なフェアトレードなどの活動とは異なり、全ての売上を製作者のもとに送るのがGerai OAの特徴の一つです。私たちの活動は純粋なボランティアで手工芸品販売の利益は全て制作者の元に送られます。出店など各種活動の諸経費は私が自費で用立てていて、年間の諸経費は1万リンギ程度です。活動は多くのボランティアたちの支援と情熱によって支えられています」。レイタさんはこのように活動の様子を語る。

Gerai OA

 実際のところ、手工芸品販売による売上はわずか。マレーシア政府が定義する貧困層に含まれる割合が人口の5割に達するとされる先住民への経済面での援助としては力不足だ。

 しかし、Gerai OA の最大の目的は先住民たちの心のケアだ。急激に進む土地開発と経済発展に取り残され、多くの先住民たちが民族としての誇りと人としての尊厳を失いつつある。

 そんな彼らに自身の民族文化への誇りと自信を取り戻してもらうことが Gerai OA の目標だ。

 「一つ一つの手工芸品には製作者の氏名が記載されています。自分が作った品物が価値のある伝統手工芸品として人々に認められ商取引の対象となったこと。それ自体が先住民の人たちに自尊心を取り戻させ、自身の文化への自信を復活させるのです。半島マレーシアのオラン・アスリの村では、それまで自分たちの伝統文化に見向きもしなかったオラン・アスリの若者たちが伝統手工芸品作りのワークショップに積極的に参加するなど変化の兆しが現れています」。このように語るレイタさんは更に活動は2つの側面を持つと指摘する。

 「経済発展の中で忘れ去られようとしているオラン・アスリへの一般の関心を高め、彼らへの理解を深めてもらうキッカケに伝統手工芸品がなることも期待しています。彼らの問題はマレーシアに住む人々全体が解決に向け努力すべき課題であることを多くの人に理解してもらえることを願っています」

 レイタさんは先住民の伝統手工芸品を購入した人たちが少しでもオラン・アスリの現状に関心を持つよう希望し、「本当に手弁当の持ち出しになってしまいますが」と笑って前置きした上で、いつでもボランティア参加希望者を歓迎していますと明るく語った。(堀井満之)

Gerai OA
連絡先
Reita Faida Rahim (Cordinator)
Mobile +6019 751 8686
email geraioa@gmail.com
Facebook:www.facebook.com/geraioa
オンラインショプ:www.elevyn.com/shop/geraioa
写真提供:Gerai OA(無断転載を禁じます)

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